2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11430006
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田中 洋子 筑波大学, 社会科学系, 助教授 (90202176)
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Keywords | ドイツ / 社会民主党 / 労働組合 / 失業 / パート / 労働時間 / NPO / 福祉国家 |
Research Abstract |
ドイツ社会民主党(SPD)における労働政策は、現在非常にアンビバレントな方向性の均衡の上にバランスを保っていると捉えることができる.ドイツは今、景気後退に伴う失業・長期失業者の増大や労働市場におけるミスマッチという問題状況を抱えており、その解消のための経済政策・労働政策は様々に試されているものの、必ずしも成果がでているわけではない.SPD政権はこうした状況を打破するために、一方で、市場主義的・アメリカ化の政策体系とも言える、市場の流動化・自由化政策を押し進めることによって、硬直化していると批判の出ていたドイツの企業・労働システムの改革をはかっている.しかし、同時に他方で、SPDの下部からは伝統的労働組合論を乗り越えて、労働システムの根本的な改造が提起されつつある.それは、例えば失業者によるNPO活動を積極的に評価したり、男女を問わず全員をパート労働化しようといった大胆な議論にまで展開している.それは、経済の停滞を市場の自由化を通じて活性化するか、経済の停滞を新しいタイプの社会国家理念の再構成・再定義のために利用するかという全く異なった方向性を示していると言える.こうしたきわめて微妙な政策的バランスの中で、SPDの伝統的政策は二つの相反する方向の双方から根本的な見直しを迫られつつあると言うことができよう.
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Research Products
(1 results)