1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11430007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
ちょ 斗変 名古屋大学, 大学院・国際開発研究科, 助教授 (20262834)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
咸 恵善 中部大学, 経営情報学部, 助教授 (70218551)
黄 圭燦 名古屋商科大学, 商学部, 講師 (70298503)
金 顕哲 筑波大学, 社会工学科, 助教授 (90288449)
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Keywords | 制度干渉 / アメリカン・スタンダード / TQC / 6シグマ運動 / CVS / 金融制度 / 年俸制 / 抜擢人事 |
Research Abstract |
本研究の目的は日韓の制度干渉のあり方をまず解明し、その背後で働く制度環境の相違を倫理的に究明するところにある。今年は、理論化に先立って日韓の諸機関や企業への訪問調査を実施することにより実態把握に努めた。紙幅の制約のため、調査の詳細を述べることは控えたいが、実態調査を通じて強く印象に残っているのは、現在の韓国では、日本の技術や制度に対する信頼が著しく低下しており、それに代わってアメリカ制度や技術への期待が強まってきているという点である。この点、97年の通貨危機以降顕著になってきた傾向であるが、アメリカ制度や技術の導入、学習過程がきちんとした自己認識・自己評価に基づく整合性の考慮のうえで行われるとすれば、それなりの選択肢になれるが、問題は自主性を欠いた無批判的な導入・学習があまりにも多いことである。最近、外部からの圧力やアメリカ・スタンダードへの盲目的な追従になどによる「とりあえずシステムを変えてみよう」という動きもあり、その帰結が心配される。以下では四つの研究分野ごとの研究会・実態調査の成果を簡単に述べる。 第一の生産システム:今回は自動車・電機企業を中心に日本のTQCとアメリカ発の6シグマ運動の比較を行った。両方とも経営の科学化、全社的な品質管理、競争力の強化を目的とする経営管理手法であるが、6シグマの方がより統計的な手法を多用し、職制によるトップダウンの傾向が強い。現場の意見では、日本のTQCがうまく定着できなかったので、6シグマを導入したというが、実施間のない頃なのでその成果はまだ分からないということであった。但し、この手法は高度な統計的な手法を駆使することもあって現場ワーカーの協力を引き出すには限界があるし、また導入して失敗を経験した企業も多数あるので、韓国の生産現場に根づく、すなわち制度として定着していくには難しいのではないか。第二の流通組織:大型CVSの発展方向の相違を調査するためにセブンイレブンの韓国子会社を訪問した。印象的だったのは、業界の人が制度移転における文化の働きを全く無視している点である。すなわち、CVSにおける現存する日韓の差異というものは、発展の歴史の違いであって、流通の合理化が順調に進めば、韓国も日本と同様のシステムになっていく。第三の金融制度:日本の制度にもっとも近い分野であったが、通貨危機以降様代わりが非常に激しい。欧米系企業に買収されたり、経営権の一部を取られた銀行の場合は、会計制度、人事制度、社外重役制度などのあらゆる分野において欧米化が急激に進展している。金融機関の変化は他の業種の変化を強いる呼び水になる可能性が強いので、今後の動向が注目される。第四の人事制度:年俸制や抜擢人事など、人事制度の欧米化がここ2-3年大幅に進展した。問題はその帰結だが、今のところ成果を評価できる段階ではないが、実態調査や理論研究を並行しながら、推移を見守る必要がある。
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