2001 Fiscal Year Annual Research Report
無反跳生成法によるエータ及びオメガ中間子の核内での質量変化の研究
Project/Area Number |
11440073
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
早野 龍五 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (30126148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
比連崎 悟 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (60283925)
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Keywords | 量子色力学 / パイ中間子 / エータ中間子 / オメガ中間子 / 有効質量 / GSI研究所 / チェレンコフ検出器 / カイラル対称性 |
Research Abstract |
「核物質中でハドロン(中間子等)の質量がどのように変化するか」は,現在の原子核物理の中心的な課題の一つである.これを実験的に研究するため,高エネルギー重イオン衝突で高温核内に中間子を作り,そのレプトン対崩壊から中間子質量を再構成する試みが世界各地で始行われている.本研究はこれとは全く異なる発想,すなわち原子核中に中間子を「無反跳」で生成し,その生成スペクトルの解析から原子核中の中間子の質量変化を決定することを目指したものである. まず,先にデータ収集が完了したπ中間子の深い束縛状態(鉛205原子核にπ中間子が1s状態で束縛されたもの)について,核内質量変化という観点から,理論・実験両面で詳細な研究を行なった.その結果,鉛原子核の中央ではπ中間子質量が約26MeV重くなっていることを明確に示し,Physical Review Letter誌に発表した. この研究を更に発展させ,π中間子質量に核物質の陽子・中性子比率が及ぼす影響を明らかにすべく,多数のスズ同位体中でπ中間子質量変化を調べる実験をGSI研究所において実施した.このデータの詳細な解析は現在進行中であるが,明確な同位体効果が見えており,所期の目的は達せられる模様である.最新の解析によれば,原子核中でπ中間子の崩壊定数が減少していることが強く示唆されている.この成果についても近日中に投稿予定である. 我々はかねてよりドイツGSI研究所において核内にエ一タ(η)及びオメガ(ω)中間子を無反跳で生成する実験を提案し,採択されているが,GSI研究所の都合により,上記のπ中間子スズの実験が先に実施された結果,エータ/オメガ実験の実施は来年度に持ち越されることになった.今年度は,昨年度に引き続き,この実験に用いる測定装置(ヘリウム3にのみ感度を有し,陽子に不感,かつ位置分解能を有するという特殊なチェレンコフカウンター)の動作確認を高エネルギー研究所において行い,本実験に必要な性能が得られることが確認された.
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[Publications] S.Hirenzaki, E.Osct: "Deeply bound pionic atoms from the(γ,p)reaction in nuclei"Physics Letters B. 527. 69-72 (2002)
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[Publications] A.Ramos, S.Hirenzaki, et al.: "Antikaons in nuclei and dense nuclear matter"Nuclear Physics A. 691. 258-267 (2001)
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[Publications] Y.Umemoto, S.Hirenzaki, K.Kume, H.Toki, I.Tahihata: "Deeply Bound pionic atoms on-unstable nuclei"Nuclear Physics A. 679. 549-562 (2001)
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[Publications] H.Geissel, H.Gilg, A.Gillitzer, R.S.Hayano, et al.: "Deeply Bound 1s and 2p Pionic States in ^<205>Pb and Determination of the s-Wave Part of the Pion-Nucleus Interaction"Physical Review Letters. (掲載決定済み(受理番号LD8637)). 1-4 (2002)