2001 Fiscal Year Annual Research Report

時間分解過渡分光法によるC_<60>単結晶の光誘起重合機構の研究

Research Project

Project/Area Number	11440096
Research Institution	Department of Materials Science and chemistry, Faculty of Systems Engineering, Wakayama University
Principal Investigator	神野賢一和歌山大学, システム工学部, 教授 (80024339)
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha)	伊東千尋和歌山大学, システム工学部, 助教授 (60211744) 山門英雄和歌山大学, システム工学部, 助教授 (30242035) 篠塚雄三和歌山大学, システム工学部, 教授 (30144918)
Keywords	フラーレン / 炭素クラスター / 光重合 / 光誘起構造変化 / フレンケル励起子 / 吸収端 / 光伝導 / ラマン散乱
Research Abstract	前年度までの研究において、C_<60>単結晶の基礎吸収端直下には溶液試料には見られない特有な局在電子状態が存在し、それが固体相における最低エネルギー準位を構成していることを我々は明らかにした。単結晶試料に特徴的なフォトルミネッセンス(一重項発光)は、この局在準位を始状態とする脱励起の結果生じている。室温付近の高温相で顕在化するC_<60>単結晶の光重合反応は、緩和励起三重項準位をその前駆状態として進行するものと推定されるが、上記のような状況を考えると、前駆状態と推定される"三重項状態"は、この局在準位のスピン三重項である可能性が高い。しかし一方で、過去になされた報告から、基礎吸収端直下の領域には、200K辺りから現れ260K以上の高温相において急激に成長する、原因不明の"異常光伝導ピーク"の存在が知られている。つまり、C_<60>単結晶における最低エネルギー準位の実態については、いまだ不明な部分が多かった。光重合の前駆状態を確定する上で、この異常光伝導の原因を解明し、固体相に特徴的な光学物性と電子物性とを規定する最低エネルギーの電子励起状態の実態、すなわち、バルクのフレンケル励起子と局在電子状態の具体的役割と相互の関わりを明確にすることが極めて重要である。このような状況認識の基で、本年度においては光伝導測定装置を構築し、吸収端域スペクトルの裾構造の温度依存性の測定と光伝導スペクトルの追試実験を行うとともに、発光スペクトル微細構造の解析と励起子緩和ダイナミクスのモデルを構築して英文論文に纏めた(JPSJ71,(2002),630-643)。また、光伝導スペクトルについて、「フレンケル励起子が熱解離してキャリア生成が起こるが、局在電子状態はこれに関与しない」という簡明なモデルによる説明を提案した(2002年春の物理学会講演:論文準備中)。このモデルのもとで、光吸収スペクトルの実測結果を用いてシミュレーションを行うと、"異常ピーク"は、温度依存性の振舞いも含めて、その特徴を良く再現することができる。この結果は、励起光が局在吸収帯で部分吸収され、実効的なキャリア生成収量が減少するために、光伝導スペクトルに特徴的な"ディップ"が現れることを検証したものである。すなわち、その低エネルギー側に位置する上記"異常ピーク"は単なる見掛けの構造に過ぎず、そこに特定の準位構造が実在する訳ではない。系の最低励起状態は広い温度領域にわたって、フレンケル励起子状態と束縛励起子による局在状態の二種類で矛盾無く理解することが出来るので、光重合機構には後者の三重項準位が深く関与している可能性が一層明確となったと言える。

Research Products

(6 results)

All Other

All Publications (6 results)

[Publications] I.Akimoto, K.Kan'no: "Origin of photoluminescence and spectral analysis of vibronic structure resolved in C_<60> single crystals"J.Luminescence. 87-89. 788-790 (2000)
[Publications] 小柳孝仁, 森正弘, 秋元郁子, 神野賢一: "C_<60>単結晶における「光伝導異常」の原因について"第12回光物性研究会論文集. 12.I-B-23. 90-93 (2001)
[Publications] I.Akimoto, K.Kan'no: "Photoluminescence and Near-Edge Optical Absorption in the Low-Temperature Phase of Pristine C_<60> single crystals"J.Phys.Soc.Jpn.. vol.71, No.2. 630-643 (2002)
[Publications] C.Itoh, K.Iwahashi, K.Kan'no: "Photogeneration of charge carriers in titanium oxides"Nucl.Instr.and Meth.B. (in press). (2002)
[Publications] 岩橋邦明, 伊東千尋, 神野賢一: "二酸化チタン結晶における光キャリア生成"第12回光物性研究会論文集. 12.IV-A-94. 374-377 (2001)
[Publications] 秋元郁子, 小柳孝仁, 神野賢一: "C_<60>単結晶における吸収端電子構造と「光伝導異常」"日本物理学会第57回年次大会概要集. 第57巻第1号第4分冊(26pXN-3). 797 (2002)

2001 Fiscal Year Annual Research Report

時間分解過渡分光法によるC_<60>単結晶の光誘起重合機構の研究

Principal Investigator

神野 賢一 和歌山大学, システム工学部, 教授 (80024339)

Research Products

[Publications] I.Akimoto, K.Kan'no: "Origin of photoluminescence and spectral analysis of vibronic structure resolved in C_<60> single crystals"J.Luminescence. 87-89. 788-790 (2000)

[Publications] 小柳孝仁, 森 正弘, 秋元郁子, 神野賢一: "C_<60>単結晶における「光伝導異常」の原因について"第12回光物性研究会論文集. 12.I-B-23. 90-93 (2001)

[Publications] I.Akimoto, K.Kan'no: "Photoluminescence and Near-Edge Optical Absorption in the Low-Temperature Phase of Pristine C_<60> single crystals"J.Phys.Soc.Jpn.. vol.71, No.2. 630-643 (2002)

[Publications] C.Itoh, K.Iwahashi, K.Kan'no: "Photogeneration of charge carriers in titanium oxides"Nucl.Instr.and Meth.B. (in press). (2002)

[Publications] 岩橋邦明, 伊東千尋, 神野賢一: "二酸化チタン結晶における光キャリア生成"第12回光物性研究会論文集. 12.IV-A-94. 374-377 (2001)

[Publications] 秋元郁子, 小柳孝仁, 神野賢一: "C_<60>単結晶における吸収端電子構造と「光伝導異常」"日本物理学会第57回年次大会概要集. 第57巻第1号第4分冊(26pXN-3). 797 (2002)

神野賢一和歌山大学, システム工学部, 教授 (80024339)

[Publications] 小柳孝仁, 森正弘, 秋元郁子, 神野賢一: "C_<60>単結晶における「光伝導異常」の原因について"第12回光物性研究会論文集. 12.I-B-23. 90-93 (2001)