2000 Fiscal Year Annual Research Report
液体ヘリウム表面上ウィグナー電子結晶のダイナミクス
Project/Area Number |
11440102
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
白濱 圭也 慶應義塾大学, 理工学部, 助教授 (70251486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴山 義行 慶應義塾大学, 理工学部, 助手 (20327688)
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Keywords | ウィグナー結晶 / 2次元電子系 / 非線形伝導 / 液体ヘリウム |
Research Abstract |
本研究は、液体ヘリウムの表面に形成される2次元ウィグナー電子結晶の極低温でのダイナミクスを研究するものである。ヘリウム表面上の電子結晶は、鉛直磁場中で強い非線形伝導を示す。この現象は結晶電子が、自身がヘリウム表面につくっているへこみ(dimple)から集団的に飛び出す、スライディング現象として理解できる。本研究では、この電子結晶のスライディング運動という興味深い現象に対する系統的理解を得ることを目的として、パルス電圧応答の高精度測定により、電子結晶の非線形伝導を調べる。 本年度は、前年度より行ってきた、希釈冷凍機の建設とパルス法測定装置の製作を終え、液体ヘリウム4表面上ウィグナー結晶のパルス電圧に対する応答を、高い精度で観測することが可能になった。 これまでのパルス電圧を用いた実験で、非線形伝導の出現は電圧の時間変化率(dV/dt)に支配されることがわかったが、これまで用いてきたパルス電圧は両端が時間tに比例する台形型であったため、スライディング前後の現象を詳しく調べることが困難であった。そこで新しい手法として、立ち上がり(下がり)が時間の2乗に比例する「放物線型」電圧パルスを結晶に印可し、結晶への駆動力が時間に比例して変化するようにした。 その結果、スライディングはある臨界的な電圧変化率で起こることが明確に示された。しかし臨界電圧変化率の絶対値は、台形パルスを用いて得られた値より数倍大きかった。この定量的な不一致は、スライディングが起こるまでの電圧変化の履歴の違いによると推測され、現在これを確認する実験を行っている。 以上のように実験は進行中であるが、パルス応答の測定より電子結晶の非線形ダイナミクスに関する新たな知見が得られつつあり、平成12年度での本研究の目標をほぼ達成した。平成13年度はこの成果のとりまとめを行うと同時に、結晶の局所的応答を測定するための多重電極構造の開発と、ヘリウム4表面とは異なり零磁場でも非線形伝導が観測される液体ヘリウム3表面上電子結晶での実験を行っていく。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Y.Shibayama,H.Sato,T.Enoki,and M.Endo: "Disordered Magnetism at the Metal-Insulator Transition in Nano-Graphite-Based Carbon Materials"Physical Review Letters. 84(8). 1744-1747 (2000)
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[Publications] Y.Shibayama,H.Sato,T.Enoki,X.X.Bi,M.S.Dresselhaus,M.Endo: "Novel Electronic Properties of a Nano-Graphite Disordered Network and Their Iodine Doping Effects"Journal of the Physical Society of Japan. 69(3). 754-767 (2000)
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[Publications] Y.Shibayama: "^<129>I Mossbauer Effect of Iodine Absorbed in Activated Carbon Fibers"Molecular Crystals and Liquid Crystals. 340. 301-306 (2000)
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[Publications] T.Enoki,Y.Shibayama,B.L.V.Prasad,and H.Sato: "Nano-Graphite and Its Interaction Compounds"Molecular Materials. 13. 31-40 (2000)
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[Publications] K.Shirahama: "Wigner Solid on the Free Surface of Superfluid 3He-A"Physica B. 284-288. 277-278 (2000)
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[Publications] 白濱圭也: "ヘリウム3がつくる2次元量子流体(現代物理最前線)"共立出版株式会社. 70 (2001)