軌道整列・スピン-重項系BaVS3の金属絶縁体転移機構の解明

2001 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 11440107
• Research Institution: KYOTO UNIVERSITY
• Principal Investigator: 志賀 正幸 京都大学, 工学研究科, 教授 (30026025)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 中村 裕之 京都大学, 工学研究科, 教授 (00202218) ; 和田 裕文 京都大学, 工学研究科, 助教授 (80191831)
• Keywords: BaVS3 / 金属絶縁体転移 / 遷移金属硫化物 / 中性子散乱 / x線回折 / 強磁場磁化過程

Research Abstract

三角格子(六方晶)遷移金属硫化物BaVS3は70K付近で金属絶縁体転移を示す。この転移は、スピン、電荷および軌道の自由度、あるいは構造の低次元性、スピンのフラストレーション等がからんだ特異なものであると考えられ、古くから多くの研究者の興味を集めてきた。従って、その起源の解明の学問的意義は大きい。我々は、この問題にアプローチすべく、本補助金を用いて、純良結晶の作製に努力すると同時に、いくつかのグループ(東大物性研中性子、原研放射光、阪大強磁場等)と共同研究を進めてきた。その結果、いくつかの大きな進歩・重要な知見が得られ、まもなく最終的な結論に達するところまで来たと考えている。主な新しい情報は以下の通りである。
(1)過去の知見とは異なり、基底状態は反強磁性的な長距離磁気秩序状態で、磁気モーメントは高温の有効モーメントから期待される値の半分しかない。(2)過去の知見とは異なり、金属絶縁体転移で結晶の対称性の低下が起こり、バナジウムの結晶学的サイトは2サイトに分裂する。(3)強磁場実験により磁場-温度相図が完成された。
現在、この金属絶縁体転移は、この物質がもつ特異なバンド構造に由来すると考えている。すなわち、c軸方向に伸びた1次元的なバンドとc面内の2次元的なバンドがともに中途半端に詰まった状態になっていることが、バナジウム原子配列の不安定性の原因となっていると考えられる。残された問題は、基底状態の磁気モーメントが一様に小さくなっているのか、それとも0と1といったように空間的に大きく分裂しているのか、を明らかにすることであるが、これは実験精度の関係で結論が得られていない。実験は現在も継続中であるので、遠からず転移の起源を明らかにできると考えている。以上の成果のいくつかは、現在、投稿中あるいは投稿準備中であり、近いうちに出版される予定である。

Research Products

• [Publications] T.Yamasaki: "Magnetism of BaVSe3"J. Phys. Soc. Japan. 70・6. 1768-1771 (2001)
• [Publications] H.Nakamura: "Magnetism of geometrically frustrated transition-metal sulfides : BaVS3 and related compounds"Phys. Metals Metallography. (出版予定).