2000 Fiscal Year Annual Research Report
植物バイオマーカー炭素同位体比による地質時代大気二酸化炭素分圧の評価
Project/Area Number |
11440147
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
鈴木 徳行 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (00144692)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三瓶 良和 島根大学, 総合理工学部, 助教授 (00226086)
坂本 竜彦 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90271709)
長谷川 四郎 北海道大学, 大学院・地球環境研究科, 助教授 (90142918)
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Keywords | 二酸化炭素 / バイオマーカー / 高等植物 / 第三紀 / 炭素同位体比 |
Research Abstract |
極域や海洋では、氷床コア、珊瑚、有孔虫酸素同位体組成などからCO_2分圧や水温の変動を推定できる。しかしながら、陸域における気候変動や大気組成の変化を評価する方法は古植物相に基づく方法以外に知られていない。大気CO_2分圧は光合成にともなう炭素同位体分別に大きな影響を与えることが知られている。本研究では、陸上高等植物の光合成にともなう炭素同位体分別に注目して,過去の大気CO_2分圧の変動を推定する新しい方法の確立を試みた。その結果,本研究により以下の研究成果を得た。 (1)北海道古第三紀始新世石炭・炭質頁岩、北海道新第三紀中新世石炭、島根県新第三紀中新世石炭、サハリン新第三紀中新世石炭試料にはditerpane類やdiaromatic totarane、reteneといった陸上高等植物起源バイオマーカーが顕著に認められた。(2)北海道古第三紀始新世石炭・炭質頁岩に含まれるabietane type化合物の存在度とreteneの存在度の間には正の相関が認められた。(3)北海道古第三紀始新世石炭・炭質頁岩に含まれるdi-aromatic totarane、reteneそれぞれの存在度とoleananeの存在度の間には負の相関が認められた。(4)北海道古第三紀始新世石炭・炭質頁岩に含まれるdibenzofuran類とoleananeの存在度の間には正の相関が認められた。(5)北海道古第三紀始新世石炭・炭質頁岩、北海道新第三紀中新世石炭、島根県新第三紀中新世石炭、サハリン新第三紀中新世石炭の試料に含まれるn-alkaneは炭素数が増加するに従い、その安定炭素同位体比が減少するという傾向が認められた。(6)始新世の石炭に含まれるn-alkane、β-norisopimarane、diaromatic totarane、reteneは中新世の石炭に含まれるものに比べ^<13>Cに富んでいた。また特にdiaromatic totaraneではその傾向が顕著であった。(7)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)はGC-C/IR-MSによる陸上高等植物起源バイオマーカーの個別炭素同位体比測定の前処理法として非常に有効であることが分かった。(8)一連の植物バイオマーカー炭素同位体比変化曲線が過去の大気二酸化炭素分圧の変動を反映している可能性が示唆された。
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Research Products
(13 results)
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[Publications] 川田洋平,鈴木徳行,長谷川四郎,久田健一郎,小笠原憲四郎: "サハリン第三系の珪質堆積岩と古第三紀/新第三紀境界期の古海洋環境"地学雑誌. 109. 218-234 (2000)
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[Publications] Suzuki, N.: "Geochemical kinetics of organic maturation - The way to MAT98/WinMat."Res.Org.Geochem. 15. 1-5 (2000)
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[Publications] Inaba, T., Suzuki, N., A. Hirai, Sekiguchi, K., and Watanabe, T.: "Source rock lithology prediction based on diasterane abundance in the siliceous-clastic sedimentary basin, Japan"Org.Geochem. 31印刷中. (2001)
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[Publications] 鈴木徳行: "海洋バイオマーカーの進化."号外 月刊地球「21世紀の古生物学の展望-復元の科学-」. 29. 91-98 (2000)
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[Publications] 鈴木徳行: "堆積物中の陸源有機分子と古環境情報"月刊海洋. 32. 628-633 (2000)
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[Publications] 長谷川四郎,高田裕行,小笠原憲四郎,久田健一郎,Yu. B. Bladenkov: "サハリンの新第三紀有孔虫化石層序と古環境変遷"地学雑誌. 109・2. 174-186 (2000)
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[Publications] 栗田裕司,小布施明子,小笠原憲四郎,長谷川四郎,天野和孝,久田健一郎: "ロシア・サハリン島における漸新統〜中部中新統有機質微化石層序(渦鞭毛藻化石・花粉化石)とその年代・古環境"地学雑誌. 109・2. 187-202 (2000)
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[Publications] Itaki, T. and Hasegawa, S.: "Destruction of radiolarian shells during sample drying and its effect on apparent faunal composition"Micropaleontology. 46・2. 179-185 (2000)
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[Publications] Scott, D.B., Takayanagi, Y., Hasegawa, S. and Saito, T.: "Illustration and Taxonomic Reevaluation of Neogene Foraminifera Described from Japan"Palaeontologua Elctrica. 3・2. 47 (2000)
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[Publications] 山崎静子,石賀裕明,道前香緒里,東直子,Ahmed, F.,三瓶良和,Rahman, Md.H.,Islam, Md.B.: "バングラデシュ,ガンジスデルタ堆積物の元素組成-ヒ素はピートから溶出するか?-"地球科学. 54. 81-93 (2000)
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[Publications] Ishiga, H., Nakamura, T., Sampei, Y., Tokuoka, T. and Takayasu, K.: "Geochemical record of the Holocene Jomon transgression and human activity in coastal lagoon sediments of the San'in district, SW Japan."Global and Planetary Change. 25. 223-237 (2000)
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[Publications] Sawada, Y., Sampei, Y., Hyodo, M., Yagami, T. and Fukue, M.: "Estimation of emplacement temperature of pyroclastic flow using by H/C ratios of carbonaceous wood."Journal of Volcanology and Geothermal Research Geothermal Research. 104. 1-20 (2000)
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[Publications] 三瓶良和,鈴木徳行,古金典隆,小松英雄,川村晃輝,望戸尚,真野賢一,越後和正,保坂政嘉: "日本の新第三系泥質岩の有機炭素濃度."島根大学地球資源環境学研究報告. 19. 77-95 (2000)