1999 Fiscal Year Annual Research Report
電荷分離した励起状態の分子構造とダイナミックス:ピコ秒赤外分光法による研究
Project/Area Number |
11440171
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 裕巳 東京大学, 大学院・理学系研究, 助教授 (20185482)
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Keywords | 超高速分光法 / 過渡赤外分光法 / 電子励起状態 / ジメチルアミノベンゾニトリル / 電荷移動 / ピコ秒 / 分子構造 |
Research Abstract |
今年度の当初計画は、(1)ピコ秒時間分解赤外分光システムの感度向上、(2)電荷の分離した電子励起状態の時間分解赤外分光測定およびそれによる電子励起分子の構造の検討、の2点を主とするものであった。まず(1)の点に関しては、再生増幅器の安定性を改善するために新しいタイプのポッケルスセルを購入した。現時点ではあまり安定性の改善につながる結果を得ていないが、今後の調整によって安定性の向上を期待している。また新たな赤外発生用の非線形結晶として、GaSeをテストした。以前に比べて赤外強度はかなり強くなったため、現在では主としてこの結晶を用いている。次に(2)の点については、以下に述べるような実験を行い、重要なデータが得られたと考えている。今年度は、ジメチルアミノベンゾニトリル(DMABN)を主な研究対象とした。この分子は極性溶媒中における電荷移動型励起状態であるS_1状態において、ジメチルアミノ基がベンゼン面に対して垂直にねじれた、TICT構造をとるのではないかと考えられてきたが、明確な実験的根拠はない。本研究では、DMABNのアセトニトリル中におけるピコ秒過渡赤外吸収を測定した。また海外の共同研究者を得て、関連した構造を持ちアミノ窒素の孤立電子対軌道がπ電子軌道と直交した、シアノベンゾキヌクリジン(CBQ)についても同様の測定を行った。更に国内の共同研究者を得て、DMABNの数種類の同位体置換種の測定も行った。DMABNのS_1状態については、いくつかの赤外吸収バンドを観測しており、同位体置換種の測定からジメチルアミノ基の寄与の大きいバンドを特定することができている。CBQのS_1状態については、DMABNと比べて遥かに赤外吸収強度が弱く、高々1本のバンドしか観測されておらず、しかもDMABNとは全く異なる吸収パターンであった。現在これらのデータを整理・解析し、更に他の類縁化合物、同位体置換種の測定を続け、DMABNのS_1状態の構造を検討している。
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