2001 Fiscal Year Annual Research Report
C=Cをコアとするラジカル分子の電子状態と構造変化
Project/Area Number |
11440172
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
金森 英人 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (00204545)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溝口 麻雄 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (20322092)
芥川 忠正 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (30016125)
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Keywords | C=Cコア / サブミリ波分光 / トンネリング運動 / 三重項状態 / シス型アセチレン / 動的分光測定 |
Research Abstract |
アセチレンの三重項電子状態はC=Cコアの周りを2個のH原子が移動してcis-trans-ビニリデンの異性化反応を起こす系として理論家によって予測されて以来、それを実証しようと多くの実験家の関心を集めている。本共同研究プロジェクトはアセチレンに代表されるような基本的な分子の励起状態とその構造変化を伴うダイナミクスの本質を解明するために、理論側からは実験側が次に狙うべき実験の指針を与え、実験側からは実測結果を理論側へフィードバックすることによって、問題提起と解決を目的としている。 これまでに数多くの量子化学計算によって、最低三重項状態T_1と第二励起状態T_2についてのエネルギーポテンシャル曲線が得られている。これに基づいて、本研究ではT_1-T_2間のcis-配置における電子遷移を半導体分光法で検出し、T_1及びT_2の項値と対称性を実験的に検証した。さらに振動励起状態を含む振電遷移を観測することに成功した。観測された振動状態は全対称折れ曲がり振動(a_1)と帰属され、振動数は理論と実験でよい一致を示した。しかしながら、この振動励起状態を含む振電遷移間のスペクトル強度比と基準振動解析から得られる波動関数の重なり積分(Frank-Condon因子)を比較した結果、1次元の基準振動解析では実験結果を十分説明できないことが明らかになった。また、本研究の主題であるシス-トランス異性化反応で重要な役割をする反対称折れ曲がりモード(b_2)に関しては、1次元の基準振動解析では振動数の予想も不十分であることが判明している。これらの問題を解決するために、大規模な量子化学計算によって最低三重項状態T_1と第二励起状態T_2について、H原子の面内運動を記述すべき2次元エネルギーポテンシャル曲面を計算した。この2次元シュレジンガー方程式を直接解いて得られる振動状態の情報をもとに、実験で観測されている未帰属線の解析に生かすと共に、cis-transという異なる対称性を持つ状態間の問題を統一して扱うための拡張群に基づく基礎理論を構築した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Hideto Kanamori: "High Resolution of Acetylene in the Triplet States"International Symposium on Spectroscopy. 1. 12 (2001)
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[Publications] Akira Sato, Hideaki Sasakura, Hideto Kanamori: "Triplet Acetylene in the Vibronic Excited States"International Symposium on Free Radicals. 26. 101 (2001)