2000 Fiscal Year Annual Research Report
水溶液中の特異なクラスター集合構造の発生と機能の発現
Project/Area Number |
11440181
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
西 信之 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 教授 (60013538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中林 孝和 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (30311195)
井口 佳哉 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (30311187)
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Keywords | 水 / 水素結合 / 酢酸 / 低振動数ラマン分光法 / 分子間振動 / ミクロ相分離 / クラスター / 溶液構造 |
Research Abstract |
水と酢酸を分子比で1:1の割合で混合した溶液は、その密度がそれぞれの純品よりもはるかに高くなることが知られていた。低振動数ラマン分光法および密度汎関数法による理論計算から、酢酸がモル分率で0.5以下の領域では酢酸分子のサイドーオン型2量体が基本ユニットとなり、このユニットの持つ大きな双極子モーメントによって強い双極子-双極子相互作用が2量体間に発生し、酢酸分子の小集合体が水の中にミクロな相分離状態として出現することが明らかとなった。このような集合の中では分子の最密充填構造が実現しており、水の中に酢酸を加えるにつれて密度が増大するという事実や、超音波吸収が水のピーク(〜1GHz)よりはるかに低周波の数メガヘルツ領域に独立して現れるという事実がうまく説明される。 これに対して、溶媒を極性は大きいが水素結合を作らないアセトニトリルとした場合、酢酸分子はほぼ自由な分子として単分子でアセトニトリルの中に存在するか、アセトニトリルとコンプレックスを形成して溶解しているかのどちらかであり、酢酸はけして酢酸同士では会合しないことが明らかになった。このように、水の中の物質の溶解状態は特殊であり、溶質分子の占める空間を占める水自身の会合構造の破壊を伴い、このエネルギー損失にうち勝つだけの安定化が得られなければ、溶解に至らない。このことは、生体細胞内での物質と水との存在状態を考えるときに重要な要因となってくることが示唆された。
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[Publications] 高椋俊幸: "Structure of Clusters in Methanol-Water Binary Solutions Studied by Mass Spectrometry and X-ray Diffraction."Zeitschrift fur Naturforschung. 55a. 513-525 (2000)
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[Publications] 児玉洋一: "Time-Resolved Absorption Studies on the Photochromic Process of 2H-Benzopyrans in the Picosecond to Submillisecond Time Domain"Journal of Physical Chemistry A. 104. 11478-11485 (2000)
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[Publications] 中林孝和: Journal of Physical Chemistry A. 105. 245-250 (2001)