2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11440189
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川瀬 毅 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10201443)
|
Keywords | 超分子化学 / フラーレン / 円筒状共役分子 / 錯形成 / 超分子相互作用 |
Research Abstract |
非平面状のπ電子系をもつフラーレンやカーボンナノチューブなどの炭素同素体は物理・化学両面から詳細な研究が行われ、いくつもの興味ある物性が見い出されてきた。しかし、π電子ローブの突き出た空孔内の性質、特に他の分子や原子との相互作用や、外側のπ系との電子状態の違いは未だに明確ではない。申請者は先にナノメータースケールの空孔を持つベルト状の共役系化合物として[n]CPPA(Cyclic Para-Phenylacetylene)1a-d(n=6〜9)を比較的安定な化合物として合成した。この分子はフラーレン類などをはじめ、他の分子との超分子相互作用を検討する良いモデル分子と期待された。 本年度は (1)1aとメタノフラーレン誘導体の単結晶を生成し、X線結晶構造解析を行った。ホスト1aは、アセチレン結合が直径約13.2Åのほぼ円状の空孔をつくり、その平面に対して各ベンゼン環はややボウル状に広がった形をとっている。その空孔内に篭状のメタノフラーレン骨格がやや浮き上がった形で包含されている。ホスト・ゲスト間距離は一周3.3〜3.5Å間に収まり、曲面状のπ電子間の相互作用(凸凹面間相互作用)が強く引力的に作用していることを明確に示した。 (2)ホストの空孔サイズが異なる類縁体1a-c(ca.13.2,15.3,17.5Å)および2,6-ナフタレン骨格をもつ類縁体2(ca.14.1Å)についてC60やC70との錯体の安定性について検討した。蛍光スペクトルを用いた錯形成定数の測定結果により、C60錯体の安定性は2>1a>1b>1c、C70錯体の安定性は2>1b>1a>1cの順となった。2の両錯体の錯形成定数の比(C60/C70)は1/17になる。 今後、曲面状の共役系間のπ-π相互作用の本質についてさらに検討してゆく計画である。
|
-
[Publications] T.Enomoto: "Synthesis, Structure, and Properties of Hexaaryl [3] radialenes"Bull.Chem.Soc.Jpn.,. 73・9. 2109-2114 (2000)
-
[Publications] T.Kawase: "All-Hydrocarbon Inclusion Complex of Carbon Nanorings, Cyclic [6]-and [8] Paraphenylacetylenes"Angew.Chem.Int.Ed.Engl.. (In press). (2001)
-
[Publications] T.Kawase: "Complexation of Carbon Nanoring with Fullerenes"Angew.Chem.Int.Ed.Engl.. (In press). (2001)
-
[Publications] H.Kurata: "Synthesis of Novel Cage Molecules Bicapped with Tri (2-thienyl) methanes"J.Chem.Soc.Chem.Commun.. (In press). (2001)