2000 Fiscal Year Annual Research Report
自律複製する染色体外遺伝因子の、微小核を介する選択的排出機構
Project/Area Number |
11440220
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
清水 典明 広島大学, 総合科学部, 助教授 (10216096)
|
Keywords | extrachromosomal DNA / Micronucleus / Gene Amplification / Mitosis / Double Minutes / DNA replication / plasmid / episome |
Research Abstract |
がん細胞に見られる自律複製する染色体外遺伝因子であるDMについて、我々は、細胞内動態と選択的な排出機構の解明を行ってきた。前年度までに、DMが細胞周期進行に伴って極めて特徴的な細胞内動態を示すこと、その結果、細胞質に生じる微小核の中に極めて選択的に取り込まれ、排出の対象となること、を明らかにしてきた。本研究年度には、このようなDMに関して得られた理解をより深め、基礎生物学、医療、産業の各分野で使われているプラスミド性遺伝因子一般に拡張することを目指した。得られた成果は大きく2つに分類される。第一は、微小注入法により導入されたDNAに対する、短時間での細胞の応答に関して、以下の重要な発見をした。すなわち、外来性DNAは、従来よく知られたp53依存性のアポトーシスだけではなく、p53に依存しないアポトーシスを誘導した。この際、前者がDNAの2本鎖末端や注入場所により応答が変わるのに対し、後者の応答はこのようなことに依存しなかった。一方、アポトーシスが生じない条件では、環状DNAの方が直鎖状DNAよりも早く細胞から消失した。この機構は、p53に依存していて、能動的な排出機構によることが示唆された。本研究で得られた第2の大きな成果は、自律的に複製するプラスミドの長期的な細胞内保持に関する発見である。我々は、DHFRとc-myc各遺伝子近傍の複製起点を含むプラスミドを用い、これをDMを持つがん細胞に導入して安定な形質転換体を得ると、DMに選択的に組み込まれることを見いだした。このような組み込みは、用いるプラスミドの自律複製能に依存していた。一方、このようなプラスミドをDMを持たないがん細胞に導入すると、新たにDMが生じること、及び長期間の培養により、それが染色体に組み込まれてHSRを生じること、を見いだした。さらに、このようなDMへの組み込み、DM、HSRの新生は、プラスミドが核マトリックス結合領域(MAR)を持つことに依存していた。このような成果は、現在投稿準備中である。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] T.Tanaka and N.Shimizu: "Induced detachment of acentric chromatin from mitotic chromosomes leads to their cytoplasmic localization at G1 and the micronucleation by lamin reorganization at S-phase."Journal of Cell Science. 113. 697-707 (2000)
-
[Publications] N.Shimizu et al.: "Selective Elimination of Acentric Double Minutes from Cancer Cells Through the Extrusion of Micronuclei"Mutation Research. 448. 81-90 (2000)