1999 Fiscal Year Annual Research Report
大規模野外操作系を用いた森林―河川生態系の相互補償関係の実験的検証
Project/Area Number |
11440224
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中野 繁 京都大学, 生態学研究センター, 助教授 (50217791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 光司 北海道大学, 農学部・附属演習林, 教授 (80002301)
浅野 透 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (00281105)
和田 英太郎 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (40013578)
村上 正志 北海道大学, 農学部・附属演習林, 助手 (50312400)
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Keywords | 資源移流 / 野外操作実験 / 羽化水生昆虫 / 補償効果 / 多様性 / 現存量 / 食物網 / 森林―河川相互作用 |
Research Abstract |
異質なハビタットの隣接構造が、生物群集の多様性や生態系機能に及ぼす影響を評価することを目的に、本年度においては、森林と河川のインターフェイスにおける資源の相互移流を、春・夏期にかけて北海道大学農学部付属苫小牧地方演習林を流れる幌内川の流程1.2kmの河川全域をエンクロージャーネットで覆うことにより人為的に制御し、両生態系における生物群集の応答を定期サンプリングにより定量化した。本研究の代表者および分担者によるこれまでの調査により、森林食物網における高次捕食者である造網性クモ類および鳥類群集は、森林の生産性が低い春期における餌資源として、河川から陸上へと羽化する大量の水生昆虫に大きく依存していることが明らかとなっている。本年度の大規模野外操作実験の結果、春期における羽化水生昆虫を介した河川から森林への資源移流の遮断は、両群集の現存量の低下を招き、とくに河畔域を主な生息場所としている種において、その傾向が顕著であることが明らかとなった。一方、生産性が森林において最も高く、逆に河川で最小となる夏期においては、森林から河川への陸生無脊椎動物の落下による供給が魚類個体群の餌資源として重要であることが研究代表者らにより報告されている。本実験によるこのような餌資源の移流の遮断は、同群集の現存量および種多様性の低下をもたらすことが明らかとなった。とくに、同群集内における種間競争において劣位とされるサケ科魚類2種が、調査区内において地域的な絶滅を起こす結果が得られた。本年度の野外実験により、河川と森林を双方向に移動する資源は、両生態系の相互補助的な生物群集の維持に大きく貢献することが検証され、資源移流の減少による波及効果は、食物網および生物間相互作用を通して生物群集の多様性維持機構に及ぶことが明らかとなった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Shigeru Nakano: "Terrestrial-aquatic linkages: riparian arthropod inputs alter trophic cascades in a stream food web"Ecology. 80. 2435-2441 (1999)
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[Publications] Naotoshi Kuhara: "Interspecific competition between two stream insect grazers mediated by non-feeding predatory fish"Oikos. 87. 27-35 (1999)
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[Publications] Shigeru Nakano: "Selective foraging on terrestrial invertebrates by rainbow trout in a forested headwater stream, northern Japan"Ecological Research. 14. 351-360 (1999)
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[Publications] Hirokazu Urabe: "Linking microhabitat availability and local density of rainbow trout in low-gradient Japanese streams"Ecological Research. 14. 341-349 (1999)
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[Publications] Shigeru Nakano: "Flexible niche partitioning via a foraging mode shift: a proposed mechanism for coexistence in stream-dwelling charrs"Journal of Animal Ecology. 68. 1079-1092 (1999)
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[Publications] Mikio Inoue: "Habitat structure along channel-unit sequences for juvenile salmon: an analysis on in-stream laudscapes"Freshwater Biology. 42. 597-608 (1999)