2000 Fiscal Year Annual Research Report
大規模野外操作系を用いた森林-河川生態系の相互補償関係の実験的検証
Project/Area Number |
11440224
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
村上 正志 北海道大学, 農学部・附属演習林, 助手 (50312400)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅野 透 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (00281105)
和田 英太郎 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (40013578)
前川 光司 北海道大学, 農学部・附属演習林, 教授 (80002301)
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Keywords | 資源移流 / 野外操作実験 / 羽化水生昆虫 / 補償効果 / 多様性 / 現存量 / 食物網 / 森林-河川相互作用 |
Research Abstract |
2000年度は昨年に引き続き苫小牧演習林内、幌内川において操作実験を行った。幌内川上流部に1.2kmにわたり、農業用グリンハウスを設置し、0.5mmメッシュのナイロン製シートで河川を覆い、森林-河川間の生物の移流を妨げた。その結果、河川内のサケ科魚類の密度が34%、森林の鳥類の密度が25%、対象区と比較し減少した。これは、自然状態でのサケ科魚類の陸生昆虫への依存度40%、鳥類の羽化水生昆虫への依存度26%ときわめてよく一致し、系外の資源、河川生態系にとっては陸生の、陸上生態系にとっては河川からの資源供給が不可欠であることを意味している。さらに本年度は、河川の屈曲度と森林生態系に対する河川系の重要性の関係を胆振地区、樽前山麓の小河川を対象として検討した。ある一定面積の森林内を流れる河川を考えた場合、その屈曲度の増加は、森林面積当たりの河川表面積が増し、河川からの資源供給が増加する。実際、森林性の量類は河川の屈曲部に多く見られ、水生昆虫の供給量の増加がその要因であることが明らかとなった。 本年度はこれらに加え、安定同位体を用いた物質移流の追跡調査を開始した。予備的な調査の結果、幌内川では河川生態系に一般に見られる、高いδC13比ではなく、この値が非常に低い(約-30‰:藻類)ことがわかった。これは、幌内川が湧水起源の河川であり、土壌深層の嫌気的環境を通過してきたことを示唆している。この値は、河川と陸上起源の資源(約-25‰:植物葉)を峻別する際に非常に有効であり、来年度さらに詳細に食物網を通じた安定同位体比の変容を追跡し、これまで野外調査で得られたデータとの整合性を検討する。
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Research Products
(11 results)
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[Publications] 谷口義則,中野繁: "Condition-specific competition : implications for the altitudinal distribution of stream fishes."Ecology.. 81. 2027-2039 (2000)
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[Publications] 久原直利,中野繁,宮坂仁: "Flow mediates the competitive influence of a grazing caddisfly on mayflies."Ecological Research.. 15. 145-152 (2000)
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[Publications] 村上正志,中野繁: "Bird Function in a Forest Canopy Food Web."Proceedings of the Royal Society of LOndon B.. 267. 1597-1601 (2000)
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[Publications] 中野繁,村上正志: "Reciprocal Subsidies : Dynamic Interdependence between Terrestrial and Aquatic Food Webs."Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America.. 91. 166-170 (2001)
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[Publications] 河口洋一,中野繁: "The contribution of riparian invertebrate inputs to an annual resource budget of stream salmonids in forest and grassland reaches of a headwater stream."Freshwater Biology.. (in press).
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[Publications] Fausch, K.D., 谷口義則,中野繁,C.Grossman and C.Townsend: "Flood disturbance regimes influence rainbow trout invasion success among five holarctic regions."Ecological Applications.. (in press).
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[Publications] 本守香陽子,三橋弘宗,中野繁: "The influence of litter quality on the colonization and consumption of stream invertebrate shredders."Ecological Research.. (in press).
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[Publications] 村上正志: "Foraging mode shift in forest insectivorous birds."Avaia Science.. (in press).
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[Publications] 谷口義則,中野繁: "地球温暖化と局所的環境攪乱が淡水魚類群集に及ぼす複合的影響."陸水学雑誌.. 61. 79-94 (2000)
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[Publications] 谷口義則: "知床半島の河川におけるオショロコマおよびサクラマスの個体群の現状."知床博物館研究報告.. 21. 43-50 (2000)
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[Publications] 菊沢喜八郎,甲山隆司編: "森の自然史-複雑系の生態学.(菊沢喜八郎,甲山隆司編)."北大図書刊行会. 176 (2000)