2000 Fiscal Year Annual Research Report
沿岸有光層における生物ポンプ効率の制御要因-生物・元素・有機分子種による解明-
Project/Area Number |
11440226
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Research Institution | UNIVERSITY OF TSUKUBA |
Principal Investigator |
濱 健夫 筑波大学, 生物科学系, 助教授 (30156385)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 征矢 東京水産大学, 水産学部, 教授 (70114220)
井上 勲 筑波大学, 生物科学系, 教授 (70168433)
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Keywords | 生物ポンプ / 基礎生産 / 移出生産 / 植物プランクトン / 鉛直輸送 / 炭水化物 |
Research Abstract |
植物プランクトンによる一次生産量および生産物の季節変化、更にそれらの有光層以深への有機物の鉛直輸送との関連を明らかにするために、相模湾および伊豆半島下田沖において観測を実施した。その結果以下のことが明らかとなった。 1)相模湾中央部の一次生産量は、10月と4月に最大値を示した。これはいずれも水塊の季節的な鉛直混合によりもたらされたものであり、基礎生産量が栄養塩の有光層への供給量に依存していることを示している。 2)光合成により生産された有機物の中で、炭水化物の占める割合は夏季に高い傾向を示した。これは夏季の有光層では栄養塩の欠乏が生じていることを示唆している。一方、栄養塩供給が豊富だった季節では炭水化物の全生産量に対して占める割合は低いものであった。 3)下田沖でのセジメントトラップの係留で得られた有機物の鉛直フラックスを生産量と比較することにより、有機物の移出比を求めたところ、1前後の高い値が認められた。この結果は沿岸域では、トラップ上層の有光層からの有機物の沈降に加えて、横方向の移流による有機物の輸送が生じていることを示している。 4)炭水化物と脂肪酸とで移出比を比較すると、炭水化物が1以上の高い値を示したのに対し、脂肪酸は0.3前後と小さい値を示し、有機物間で大きな違いが認められた。これは炭水化物が沈降粒子の形成に対し大きな役割を担っていると考えられるのに対し、脂肪酸は沈降粒子形成への寄与は小さくまた有光層内で比較的速やかに分解されていることを示唆している。
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[Publications] K.H.Shin,T.Hama et al.: "Dynamics of fatty acids in newly biosynthesized phytoplankton cells and seston during a spring bloom"Marine Chemistry. 70. 243-256 (2000)
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[Publications] T.Hama: "Production and turnover of organic matter through phytoplankton photosynthesis."Terra Scientific Publishing. 38 (2000)