2000 Fiscal Year Annual Research Report
異型花柱性植物を用いた送粉共生系のスケール横断的研究
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11440227
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鷲谷 いづみ 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (40191738)
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Keywords | サクラソウ / トラマルハナバチ / ユキワリソウ / カッコソウ / 異型花柱性 / 送粉共生系 / ポリネーター / 人工授粉 |
Research Abstract |
1)サクラソウとその主要なポリネータであるトラマルハナバチの女王との生物間相互作用にとって重要な意味をもつ花の形の変異を詳細に分析し、野外で、花の形に係わる自然淘汰、すなわちモルフも係わらず柱頭を高くする方向への自然淘汰を検出し、そのような自然淘汰が生じるメカニズムに関して、授粉パターンおよび花粉持ち越しパターンの詳細な分析を試みた。その分析においては、異型花柱の両モルフについて、多数の試料における花粉のサイズ(モルフ間で明瞭な差異がある)、葯における花粉生産、トラマルハナバチ女王の訪花に伴う葯からの花粉持ち出し、女王蜂の口吻への付着、訪花順に応じた柱頭への授粉などを測定し、低い位置にある長花柱花の葯からの花粉はポリネータの体への付着において効率が低く、低い位置にある柱頭は適法・不適法を問わず受粉の効率が低いことが明らかにされた。また花粉の持ち越しは相当大きく、クローン間での送粉に十分寄与する可能性が示唆された。 2)茨城県笠間市の県立自然公園を主な調査地として、花資源の分布とコマルハナバチの訪花頻度に関するデータを季節を通じてとり、コロニー分布を検討するシミュレーションモデルを作成した。 3)北海道の約20局所個体群における個体群の空間構造とトラマルハナバチの訪花がサクラソウの有効な受粉(異型花粉の受粉)に及ぼす影響を検討した。また、長野県軽井沢においてサクラソウが残されている約10箇所において、クローン数、花型構成、個体群の空間構造、開花フェノロジーおよびトラマルハナバチ女王の訪花など生物間相互作用と種子生産について基礎的な調査を行った。 4)これまでほとんどその生態が明らかにされていない異型花柱のサクラソウ属高山植物のユキワリソウについて、ポリネータとの生物間相互作用の研究を行うために浅間山のカルデラ荒原湯の平で、局所個体群の分布、個体群の空間構造、フェノロジー、訪花昆虫、種子生産、異型花柱に関する基本的な特性についての調査を実施した。湿原と崖地というようにかなり環境の異なる場所に局所個体群が認められ、クローン成長に違いが認められたが、いずれの場所でも種子生産は良好でしばしば訪花するオドリバエの1種がポリネータとしての役割を担っている可能性が示唆された。
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[Publications] Matsumura,C.and Washitani,I: "Effects of population size and pollinator limitation on seed set of Primula sieboldii populations in a fragmented landscape."Ecological Research. 15. 307-332 (2000)
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[Publications] Nishihiro,J.and Washitani,I.: "Patterns and consequences of stigma height variation in a natural population of a distylous plant, Primula sieboldii."Functional Ecology. 14. 502-512 (2000)
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[Publications] Matsumoto,J.,Muraoka,H.,and Washitani,I: "Ecophysiological mechanisms used by Aster kantoensis, an endangered species, to withstand high light and heat stresses of its gravelly floodplain habitat."Annals of Botany. 86. 777-785 (2000)
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[Publications] Matsumoto,J.,Muraoka,H.,and Washitani,I: "Whole plant carbon gain of an endangered herbaceous species Aster kantoensis and the influence of shading by an alien grass Eragrostis curvula in the gravelly floodplain habitat."Annals of Botany. 86. 786-797 (2000)