2001 Fiscal Year Annual Research Report
アシナガバチ類におけるワーカー産卵の進化維持機構に関する研究
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11440228
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
土田 浩治 岐阜大学, 農学部, 助教授 (00252122)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 純一 茨城大学, 理学部, 教授 (00192576)
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Keywords | フタモンアシナガバチ / コアシナガバチ / マイクロサテライト / ワーカー産卵 / 血縁構造 / 性比 |
Research Abstract |
アシナガバチのワーカー産卵の進化維持機構を解明するために、フタモンアシナガバチとコアシナガバチを材料に、分子生物学的手法を用いて、調査研究を行った。13種類のプライマーを作成し、親子判定が正確にできるようにした。この手法を用いて、フタモンアシナガバチのわーかー産卵について調査研究したところ、以下のことが明らかとなった。 (1)最初のワーカーと同じ時期に羽化する初期羽化オス(early male)は遺伝的に二倍体であり、事実上繁殖が不能であること。 (2)ワーカー産卵はコロニーサイズの影響を強く受けており、そのサイズが大きくなるにつれて、ワーカー産卵数が増加し、それにつれてコロニーのオス比が大きくなること。また、次世代の繁殖世代の羽化時期もワーカー産卵の影響を受けており、小さいコロニーでは、繁殖メスが繁殖オスより早く羽化する傾向が、また大きなコロニーでは、同時もしくはむしろ、繁殖オスが繁殖メスより早く羽化する傾向にあること。 (3)PCR方を用いて分析したところ、オスの42%がワーカー産卵に由来すること。しかし、コロニーサイズとワーカー由来のオス数には、相関関係が認められなかったこと。女王はワーカー由来の卵を盛んに除去し、自身の生むオス卵に置き換えていること。 (4)以上のことから、本種のワーカー産卵は、コロニーサイズの影響を強く受けているが、その生存については、個々のコロニーの女王の影響を受けることが明らかとなった。 コアシナガバチについては、以下のことが明らかとなった。 (1)ワーカー、オス、繁殖メスは、それが羽化したセルのサイズで明確に区別が可能であること。 (2)これを利用して、繁殖個体における性比と、コロニーサイズの関係を見たところ、コロニーサイズが増大するにつれて、メス比が増加する傾向が認められたこと。 (3)以上のことから、本種の繁殖中の性比は、より成功したコロニーはより多くのメスを生産する傾向にあることが明らかとなった。 その他 オーストラリア産アシナガバチRopalidia romandiのコロニー内の血縁構造を分析した。血縁度から判定された女王数は約3匹であった。これは、本種においても、女王数が減少したときのみ繁殖メスが生産されているというcyclical oligogynyが起きているという、旧大陸に生息する種でのはじめての発見となった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Tsuchida, K., Ito, Y., Katada, S., Kojima, J.: "Genetical and morphological colony structure of the Australian swarm-founding polistine wasp, Ropalidia romandi_ (Hymenoptera : Vespidae)"Insectes Sociaux. 47. 113-116 (2000)
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[Publications] Kojima, J., Tsuchida, K.: "Oviposition and queen manipulation by swarm workers of an Australian swarm-founding paper wasp, Ropalidia romandi (Le Guillou) (Hymenoptera, Vespidae)"Entomological Science. 3. 65-72 (2000)
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[Publications] Inagawa, K., Kojima, J., Sayama, K., Tsuchida, K.: "Colony productivity of the paper wasp Polistes snelleni : Comparison between cool-temperate and warm temperate populations"Insectes Sociaux. 48. 259-265 (2001)
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[Publications] Tsuchida, K., Nagata, Kojima, J.: "Diploid males and sex determination in a paper wasp, Polistes chinensis antennalis (Hymenoptera : Vespidae)"Insectes Sociaux. (in press).