1999 Fiscal Year Annual Research Report
緑色植物の葉緑体内構造の機能を探索する比較生物学的研究
Project/Area Number |
11440241
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野崎 久義 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (40250104)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮村 新一 筑波大学, 生物科学系, 講師 (00192766)
堀 輝三 筑波大学, 生物科学系, 教授 (90057563)
加藤 雅啓 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (20093221)
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Keywords | 葉緑体 / 微細構造 / 分子系統解析 / CO_2濃縮機構 / rbcL遺伝子 / atpB遺伝子 / 緑色植物 / 機能推測 |
Research Abstract |
ピレノイドがなくCO_2濃縮機構を保持しているChloromonas2株の細胞内に蓄積された無機炭素の濃度はピレノイドをもつChlamydomonas reinhardtii と比較すると1/10程度の値であり(Morita et al.1998,Planta 204:269-276)、これらの差がピレノイドの有無に関係するのか、両者の系統的差異によるものかを確かめる必要があった。そこでBuchheim et al.(1997、J.Phycol.33:286)が18SrRNA遺伝子系統樹でChloromonasに近縁であると示唆したChlamydomonas等6株を取り寄せて詳細なRuBisCOの免疫電子顕微鏡観察を含む微細形態学的観察とCO_2固定に関する生理学的特性に着目した比較生物学的研究およびrbcL遺伝子1128塩基対を用いた系統解析の結果を実施した。その結果、葉緑体内にRuBisCOの集中したピレノイド構造をもつがRuBisCOの集中度が低く典型的なピレノイドスターチに囲まれていないものを有する株は典型的なピレノイドをもつものから2個の独立した系統群で派生的に平行進化していることが判明し、「高濃度のRuBisCOをもつピレノイドスターチで囲まれた典型的なピレノイド」が「細胞内の高い無機炭素の濃度」に関係している事が強く示唆された。これはピレノイド構造とCO_2濃縮機構に関する今まで示唆されたことのない具体的な関係である。 rbcL遺伝子はピレノイドの主成分であるタンパク質をコードする遺伝子であることから、ピレノイドに関わる形質に変異をもつ生物群の系統解析結果において不自然な系統関係を導き出す場合がある。また、上述ののrbcL遺伝子系統樹ではその一部の枝にブートストラップ値が低く系統関係が不明瞭な部分がある。従って、rbcL遺伝子とは異なる系統解析のマーカーで分子系統樹を構築するために上記のChloromonasとそれに近縁なChlamydomonas株のatpB遺伝子1128塩基対の塩基配列を決定した。その結果、これらの系統群の中ではrbcLタンパク質のアミノ酸がatpBと比較すると明らかに置換が高いことが示された。
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[Publications] Morita,E.: "Role of pyrenoids in the CO2-concentrating mechanism comparative morphology,physiology and molecular phylogenetic analysis of closely related strains of Chlamydomonas and Chloromonas(Volvocales)"Planta. 208. 365-392 (1999)