2000 Fiscal Year Annual Research Report
ヒヨドリバナ属有性型・無性型におけるLRR型耐病性遺伝子の分子進化
Project/Area Number |
11440247
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
矢原 徹一 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (90158048)
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Keywords | ヒヨドリバナ / 有性生殖 / 無性生殖 / R遺伝子 / LRR / 遺伝的変異 |
Research Abstract |
有性生殖の機能については、有害突然変異を効率よく排除するためであるという対有害変異説と、病原体のすばやい進化に対抗するためであるという対病原体説(赤の女王説)が有力視されているが、いずれについても十分な検証は行われていない。本研究の目的は、対病原体説を検証する実験系としてもっとも有力なヒヨドリバナージェミニウイルス系を用い、宿主であるヒヨドリバナの耐病性遺伝子の変異や分子進化を有性型集団と無性型集団の間で比較することにある。ヒヨドリバナージェミニウイルス系では、有性型集団より無性型集団においてウイルス感染頻度が高いこと、ウイルス感染は宿主の適応度を大きく下げること、有性型集団に感染したウイルスではアミノ酸置換数が多いことがすでにわかっている。対病原体説が正しければ、有性型集団では耐病性遺伝子の変異性が高く、そのためにウイルス感染率が低いと予測される。 近年急速に研究が進んだNBS-LRR型植物耐病性遺伝子に着目し、5'側の保存的な配列を利用してPCRプライマーを設計し、既知の配列と相同性のあるヒヨドリバナの配列を得ることができた。このプライマーを用いて、有性型と無性型の遺伝的変異性の比較を行った。その結果、意外にも有性型と無性型の間に有意差はなかった。この事実は、無性型においてもおそらく中立的な変異が有性型と同様の率で起きていることを示唆する。 上記の比較は、5'側の保存的な配列に関するものである。病原体のタンパク質と相互作用する領域は進化速度の速い3'側にある。仮説のさらなる検証のためには、この領域の変異を有性型と無性型で比較する必要がある。
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