Research Abstract |
有機材料や分子機能材料を積極的にエレクトロニクスの分野に応用しようとする動きが活発になり,電子素子への応用としてダイオード,トランジスタをはじめさまざまな素子が試作検討されている。特に,光伝導現象を示す有機材料は電子写真感光体OPCとして実用化されている。有機材料は種類が豊富であることが特徴であるが,その中でも高分子主鎖に共役系が高度に発達した導電性高分子は,ドープ状態で半導体的性質を示し,禁止対幅の広いものでは絶縁体的性質を有するので,従来の高分子に関する常識をくつがえす画期的な電気的,光学的性質を有する魅力的な物質である。また,導電性高分子はその主鎖骨格が剛直な共役二重結合から構成された非共役π電子系高分子であり,少なくとも一本の高分子鎖自信では無機半導体と同様なバンドを形成し,禁止帯幅は約1.0-3.0eV程度のものが多く,可視域に吸収端を有するので光との相互作用が可能となる。ドナ/アクセプタ型光電池を自己組織化膜として試作し,素子特性について検討している。特性向上には,光誘起電荷分離により生成された正,負の電荷が逆に戻り,再結合することを阻害するのが望ましく,接合界面で電子,正孔が遠ざかるように分子設計することが必要である。また,有機超薄膜の電子素子,デバイスへの応用を考えた場合,有機分子を規則正しく配列制御することにより電気的,光学的性質などを分子レベルで制御でき,界面の特異な性質が反映されるなど,従来予想もつかなかった機能を有する素子を実現できる可能性を見出した。有機/電極界面および有機/有機ヘテロ界面のごく近傍における最新の主題を取り上げ,充分に解明されていなかった問題を浮き彫りにするとともに,ヘテロ界面における電子現象を静的にも,動的にもどのような手法で評価し,どのように解釈するのかなど技術的な問題点もあることは避けられないが,界面電子物性を評価する技術の一例を光電変換素子の特性から界面電子現象に注目して示し,光電子分光法により検討した。ナノ界面では実にさまざまで複雑な現象が生じていることも明らかとなった。例えば,電気化学における界面は,電極と電解質との共存系であり,この界面を介した電位勾配のある場での電荷の移動,化学種の変化や吸着,移動が起こり,それに溶媒が関与する不均一系での反応であるため,界面自体が化学変化することも予想されるので非常に複雑となるが,将来この方面の発展の可能性を見極めてその問題点を指摘した。
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