Research Abstract |
電気自動車は従来のガソリン車にはない大きな可能性を秘めている。一つは,電気モータの高速トルク応答をいかしたトラクション制御であり,いま一つは,複数輪独立駆動による高度な車両姿勢制御である。本研究では後者に重点をおき,4輪独立駆動車を用いた本格的な車両姿勢制御について実験および検討を行っている。 平成11年度は,増粘着制御の理論を展開し,車両の姿勢制御のための車両運動の解析と制御法を確立すると同時に,その実証が可能な高性能電気自動車の製作と改良を並行して行い,あわせてさまざまな計測システムの整備を行ってきた。 具体的な今年度の研究実績は以下の通りである。 (1)粘着現象の理解と増粘着制御法の考案 実際に増粘着制御を行っている例として,電気鉄道の再粘着制御,自動車のABSの新技術,タイヤの摩擦力や転がり抵抗の発生機構について調査し,転がり抵抗削減に伴う問題,走行抵抗削減による一充電走行距離への影響を調べた。増粘着制御の具体的な手法として,モデルフォロイング制御,最適スリップ率制御などを考案しているが,その挙動をさらに解明し,制御定数の最適化などを行った。 (2)2次元車両運動の解析と動的駆動力配分法や姿勢制御系の設計 車体のダイナミクスは,車両速度,すべり角,ヨーレートを用いた非線形状態方程式によって表現することができる。従来のガソリン車を対象に開発されてきた多くの手法は,より制御性のよい形で電気自動車に適用可能である。ここでは,タイヤの空転防止制御のためにモデルフォロイング制御や車速情報を必要としない独自の空転検出法を提案し,これにもとづく制御機構を装備した実験車両を製作してその有効性を実証した。さらに,4輪独立駆動車を対象とし,すべりやすい路面上での旋回時に急速制動を行った際の走行定性改善を目的として,4輪への最適駆動力配分法およびそれに関する制御法などを提案し,シミュレーションによってその有効性を検証した。 これらの手法の適用によって,スリップ等の危険性が格段に少なくなることはもちろん,すべりやすい路面でも自動車運転の安全性向上に大いに貢献することができる。また,より損失の少ないタイヤを用いることによって,電気自動車の最大の問題である一充電走行距離を,飛躍的に伸ばすことができると考えられる。 来年度は,より本格的な実験的検証を継続していきたいと考えている。
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