Research Abstract |
本研究では,原子炉解体時に放射化された鋼構造物の熱的切断によって生成するガス状・粒子状物質の同時除去法を確立することを目的としており,その基礎データとして,本年度は生成物質の中でも放射化の程度が高いとされているコバルト化合物の1つであるオクタカルボニルジコバルト(以降コバルトカルボニルと略す)に着目し,その挙動および気相中での存在形態について調べた。まず,コバルトカルボニルの分析法を確立するため,コバルトカルボニルを蒸発させ,生成した粒子をフィルタに捕集して溶出させ,原子吸光光度計でコバルト濃度を測定した。一方,フィルタを透過した蒸気状物質をインピンジャに捕集し,その溶液を同様に分析した。様々な織機で捕集を試みた結果,粒子状物質は IN塩酸,蒸気状物質はIPA(インプロピルアルコール)が適していることがわかった。次に,発生蒸気の滞留時間を正確に制御できるように,円管中央部にカルボニル粉末をフィルタに挟み込んだ構造の蒸気発生部に改良し,発生温度,キャリアガス流量を変化させて,蒸気と粒子の存在割合を測定した。その結果,発生温度が高いほど,流量が大きいほど,全体の発生量は大きくなった。さらに,粒子の割合を比較すると,0.1 l/min(滞留時間 14秒に相当)の場合は約90%に達しているが,0.3 l/min(滞留時間4.6 秒に相当)では40〜74%と,0.1 l/min に比べてかなり低いことから,コバルトカルボニル蒸気から粒子が生成する反応は比較的緩慢であることがわかった。また,FT-IR(フーリエ変換赤外線分光光度計)を用いて,各温度で静置したコバルトカルボニル粉末の分解特性を調べた。その結果,架橋カルボニル基が選択的に分解しており,その傾向は温度が高くなるにつれて顕著になることがわかった。
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