Research Abstract |
本研究では,原子炉解体時に放射化された鋼構造物の熱的切断によって生成するガス状・粒子状物質の同時除去法を確立することを目的としている。本年度は,昨年度に引き続き,生成物質の中でも解体時に放射化の程度が高いとされているコバルト化合物の1つであるオクタカルボニルジコバルト(以降コバルトカルボニルと略す)に着目し,その挙動および気相中での存在形態について調べた。まず,実際のアーク水中切断試験で,蒸気状の金属化合物が発生する可能性をあらためて確認した。さらに,昨年度行った粉末からの揮散による蒸気状コバルトカルボニルの発生法(揮散法)では,粉末の分解による表面の変質のため,発生蒸気濃度が時間的に安定しないことから,新たな方法により蒸気状コバルトカルボニルの分解速度を求めた。具体的には,コバルトカルボニルを溶解させたヘキサンをアトマイザで噴霧し,発生したミストをフィルタに通過させて蒸気状物質を発生させる方法(噴霧法)である。その結果,溶剤中の濃度を変えることにより発生蒸気濃度を自由に変化させることができ,時間的にも安定した濃度で発生することが可能となった。そこで,濃度,温度,滞留時間を変化させて,コバルトカルボニルの分解速度を求め,中間体を介する逐次反応として分解速度式をたて,中間体までの反応(R_1)と中間体からコバルト粒子への反応(R_2)の活性化エネルギーEを求めた。その結果,R_1の反応速度定数k_1が小さく,Eが大きいことから,前半の反応が支配的であることが明らかになった。また,発生する粒子の大きさを評価するために,反応管を拡散チューブと見なして,粒子の透過率から粒径を見積もったところ,少なくとも1nmの粒子が生成していることがわかった。以上のことから,放射化の程度が高いとされるコバルトカルボニルを系外へ放出しないようにするためには,常温より高い温度で,20秒程度以上の滞留時間をおいて,完全に粒子に変換した上でエアフィルタで捕集すればよいと言える。
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