1999 Fiscal Year Annual Research Report
水ストレス下での光合成制御に関わる葉と根のコミュニケーション機構-葉の老化機構の解明
Project/Area Number |
11460007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
平沢 正 東京農工大学, 農学部, 教授 (30015119)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大川 泰一郎 東京農工大学, 農学部, 助教授 (80213643)
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Keywords | 土壌水分低下 / 老化 / 光合成 / 気孔 / Rubisco / 窒素 / サイトカイニン / 根の機能 |
Research Abstract |
1.低土壌水分条件に生育する水稲は、湿潤土壌水分条件に生育する水稲に比較して、老化に伴う葉の光合成速度の減少が大きく、その程度は下位の葉ほど大きかった。この光合成速度の減少は気孔が閉じることによる葉肉へのCO_2の供給速度の減少よりも葉の光合成活性の低下によっていた。葉の光合成活性の低下には炭酸固定効率とリブロース-1,5-ニリン酸(RuBP)の再生速度の低下が関係していた。葉の光合成速度の減少過程を通じて、葉の光合成速度と葉の窒素濃度、リブロース-1,5-二リン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(Rubisco)含量との間には相互に密接な関係があったことから、低土壌水分条件下で葉の老化によって光合成速度が大きく減少することには、葉の窒素含量の低下によるRubisco含量の減少が関係していることがわかった。 2.低土壌水分条件に生育するトウモロコシは、湿潤土壌水分条件に生育するトウモロコシに比較して老化に伴う葉の光合成速度の減少が大きく、この光合成速度減少の相違には葉の光合成活性の相違が大きく関係していた。葉の光合成速度の減少過程を通じて葉の窒素含量と光合成速度とは密接な関係があった。根から地上部に送られる木部液の全窒素含量は低水分土壌に生育するトウモロコシは湿潤土壌に生育するトウモロコシより有意に低く、サイトカイニン含量も有意に低かった。 次年度は老化による光合成速度の減少と根から地上部に送られる窒素量とサイトカイニン量との関係を他の作物を含めてさらに検討するとともに、これらの物質を根の木部から供給する実験系を作り、これらの物質が葉の老化に伴う光合成速度減少に及ぼす影響を明らかにしていく。
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[Publications] Hirasawa,T: "Some characteristics of reduced leaf photosynthesis at midday in maize growing in the field"Field Crops Research. 62(1). 53-62 (1999)
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[Publications] Hirasawa,T: "Physiological characterization of the rice plant for tolerance of water deficit"In Genetic Improvement of Rice for Water-Limited Environments, IRRI. 89-98 (1999)
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[Publications] 大川泰一郎: "登熟期における水稲葉身の窒素含量と光合成速度、リブロ一ス1,5-ビスリソカルポキシラーゼ含量の関係および根から地上部に送られるサイトカイニン"日本作物学会紀事. 62(別2). 76-77 (1999)
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[Publications] 山崎武仁: "登熟期における水稲品種アケノホシと日本晴の葉身窒素含量が異なる要因"日本作物学会紀事. 62(別2). 78-79 (1999)
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[Publications] 柳原里子: "低土壌水分条件下で老化によって水稲の葉の光合成速度が低下する要因"日本作物学会関東支部会報. 14. 56-57 (1999)
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[Publications] 中神弘詞: "低土壌水分条件がコムギの出液中の無機イオン量、サイトカイニン活性および葉の老化に及ぼす影響"日本作物学会関東支部会報. 14. 74-95 (1999)