2000 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫の細胞内凍結の防止機構と氷核蛋白質の合成遺伝子に関する研究
Project/Area Number |
11460022
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
積木 久明 岡山大学, 資源生物科学研究所, 教授 (60033255)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今野 晴義 岡山大学, 資源生物科学研究所, 助教授 (10108178)
前田 孚憲 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (10038309)
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Keywords | 凍結障害 / 冷温障害 / 休眠遺伝子 / 氷核蛋白質 / Na^+チャネル / K^+チャネル / ニカメイガ / オオタバコガ |
Research Abstract |
1.凍結による初期障害の部位の決定 ニカメガ越冬幼虫を-35℃で凍結した後、トリパンブルーで生体染色したところ、絹糸腺と消化管が特異的に青く染色された。一方、オオタバコガ非休眠蛹では脂肪体が特異的に染色された。これらの結果、昆虫の凍結障害は特定の組織の特異的凍結壊死により起こされることが明らかとなった。 2.細胞レベルでの低温障害機構の解析 低温障害には凍結による障害と冷温による障害がある。ここでは、ヨトウガ脂肪体由来の培養細胞系を用いて冷温障害に注目して行った。牛血清無添加培地で培養した培養細胞膜のNa^+チャネルとK^+チャネルに注目して、パッチクランプ法を用いて活性を測定したところ、Na^+チャネルは発育障害のみられる0℃3日目から活性が低下し、K^+チャネルはそれよりも遅れて活性が低下した。これらの結果、ヨトウガ培養細胞の冷温障害はNa^+チャネルの活性が低下することにより、細胞内のイオンバランスが攪乱を受け、細胞死が起こると考えられた。 3.ニカメイガ休眠幼虫特異的発現遺伝子の特定。 カイコガの胚休眠に関与しているBmEts遺伝子の塩基配列をもとに設計したプライマーを用いて、ニカメイガ休眠および非休眠幼虫より抽出したm RNAを鋳型としてRNA PCRを行った。休眠幼虫に特異的に増幅された断片をプローブとして、非休眠幼虫特異的断片とのサザンハイブリダイゼーションを行った。休眠虫特異的断片の塩基配列決定を行ったところ、カイコガのトランスフェリン遺伝子との間で高い相同性が認められた。一方、非休眠虫特異的断片の塩基配列は既知の配列とは有意な相同性を示さなかった。 4.糸状菌Fusarium moniliforme var.subglutinansが生成する氷核蛋白質の精製 各種界面活性剤を用いて活性を保持しながらの可溶化を試みたがまだ成功していない。今後は、遺伝子からの氷核蛋白の特定をも並行して行う。
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[Publications] 積木久明: "昆虫の低温耐性と氷核-主にニカメイガの知見を中心に"日本応用動物昆虫学会誌. 44・3. 149-154 (2000)
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[Publications] M.H.Qureshi,T.Murai,H.Yoshida and H.Tsumuki: "Populational variation in diapause-induction and-termination of Helicoverpa armigera (Lepidoptera : Noctuidae)"Applied Entomology and Zoology. 35・3. 357-360 (2000)
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[Publications] M.H.Qureshi,H.Yoshida,T.Murai and H.Tsumuki: "Effect of chilling on diapause termination and post-diapause development of Helicoverpa armigera (Hb.) (Lepidoptera : Noctuidae)"Applied Entomology and Zoology Chugoku Branch. 42. 35-39 (2000)