1999 Fiscal Year Annual Research Report
がん増殖・浸潤・転移および高脂血症に対する果実成分の作用解析
Project/Area Number |
11460058
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
矢ヶ崎 一三 東京農工大学, 農学部, 教授 (20166474)
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Keywords | 癌増殖 / 癌細胞浸潤 / 癌転移 / 癌性高脂血症 / 悪液質 / 果実部分 / 肝癌増殖 |
Research Abstract |
【目的】癌細胞の有する生物学的特性として,無限増殖性と転移性があげられる.複雑な癌の転移過程で,癌細胞の浸潤は重要かつ特徴的な段階である.また,担癌宿主には衰弱の原因となる癌性悪液質としての高脂血症が発生する.そこで本研究では,癌とそれに付随する症状(癌細胞の増殖・浸潤・転移と癌性高脂血症)に対する果実成分とくにブドウ中のレスベラトロール(RESV)の作用とその機構解析を目的とする. 【方法】モデル癌細胞としてラット由来腹水肝癌AH109A細胞を用いた.肝癌細胞の増殖能はWST-1法または[3H]チミジン法にて測定した.肝癌細胞の浸潤能は、ラット腸間膜より初代培養した中度細胞と肝癌細胞とを共培養し中度細胞層下にもぐり込んだAH109A細胞の数およびコロニー数を位相差顕微鏡下で数えることにより測定した. 【結果】培地にRESVを直接添加すると,AH109Aの増殖は50μMまでまったく影響を受けなかったが,それ以上の場合は200μMまで濃度依存的に抑制された.一方,肝癌細胞の浸潤能は25μMから200μMまで濃度依存的に抑制された.次に,RESVを50mg/kg体重の用量でラットに経口投与して経時的に採血し,得られた血清を上記検定系に作用させた.その結果,AH109Aの浸潤能は投与30分後ですでに有意に抑制され,1時間後で最も強く抑制されたが,3時間後ではもはや抑制作用は認められなかった.しかし,この投与量では増殖はいずれの時間でもほとんど抑制されなかった.以上のことから,RESVは腸管から吸収されて体内へ移行すること,低投与量では増殖よりも浸潤を強く抑制することが示唆された.活性酸素発生下でAH109A細胞を培養すると,その浸潤能が亢進することを見いだしている.そこでこの系にRESVを共存させたところ,活性酸素による浸潤亢進現象が消失した.すなわち,RESVの浸潤抑制機構の一つとしてその抗酸化活性の関与が示唆された. 【予定】投与量を増加させた場合の経口投与後血清がAH109A細胞の増殖を抑制するのかどうか,経口投与後血清も活性酸素による浸潤亢進現象を消失させるのかどうか,さらにアポトーシス,細胞周期,アラキドン酸カスケードに対するRESVの作用とともに,動物個体での作用を検討していく予定である.
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