2000 Fiscal Year Annual Research Report
森林昆虫の"害虫化"をもたらす要因の解明-とくに林木の防御機構との関連において
Project/Area Number |
11460068
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柴田 叡弌 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (30252282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶村 恒 名古屋大学, 生命農学研究科, 助手 (10283425)
肘井 直樹 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教授 (80202274)
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Keywords | 森林昆虫 / 害虫化 / 林木の防御 / 穿孔性昆虫 / スギカミキリ / スギ / ヒノキ |
Research Abstract |
穿孔性昆虫の1種であるスギカミキリのスギ樹幹利用様式を調査した。スギにストレスを与えるため、スギ林に強度枝打ち区、断幹区、コントロール区を設定し、スギカミキリふ化幼虫を接種した。その結果、ストレスを与えていないコントロール区では、接種したふ化幼虫はすべて樹幹の樹脂によって死亡した。ところが、強度枝打ち区や断幹区では樹脂による死亡が少なく、ほとんどの幼虫が成虫まで生存した。このことはスギカミキリ幼虫にとってスギ樹幹から滲出する樹脂が死亡主要因であることを示唆している。さらに、環状に樹幹を剥皮したスギにスギカミキリ成虫を放して産卵させ、その後の幼虫の生存率と、成虫になった場合には、成虫の体重を測定した。その結果、剥皮部より上部では下部よりも生存率が高く、そこから羽化した成虫の体重も重い傾向がみられた。これらのことから、スギカミキリはやや衰弱した生立木を利用して過ぎ林で生活していることが示唆された。 さらに、スギカミキリ雌成虫の体サイズが、それらに由来する幼虫の体サイズと生存率に及ぼす影響を知るために、体サイズの違う成虫をスギ樹幹に放してその後の幼虫生存率を体サイズを調査した。体重の重い成虫は多くの卵を産み、大きな1齢幼虫を産出した。成虫として脱出するまでの樹皮での幼虫の生存率は、大きい雌成虫に由来する生存率が小さい雌に由来する生存率よりも高い傾向がみられた。これらの結果から、大きい幼虫は生立木での死亡主要因である樹脂を突破する割合が高いことを示唆した。このように大きい雌は小さい雌よりも繁殖適応度が高いことが明らかになった。 また樹木に与えるストレスの一種として枝打ちを取り上げ、強度の枝打ちがヒノキ樹幹の通水に当たる影響を調査した。強度に枝打ちしたヒノキの樹幹に染色液(1%酸性フクシン)を注入し、樹幹内の通水面積の変化を調べた。枝打ち痕に接する辺材部は染色液に染色されず、枝打ちによって辺材の樹液流動が部分的に阻害されていることが示唆された。この通水阻害部分は、枝打ち痕の長さの9倍にまで拡がっていたことが明らかになった。
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[Publications] Shibata,E.: "Bark borer Semanotus japonicus (Col.Cerambycidae) utilization of japanese cedar Cryptomeria japonica : a delicate balance between a primary and secondary insect"Journal of Applied Entomology. 124. 279-285 (2000)
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[Publications] Kato,K.Yamada,H.and Shibata,E.: "Role of female adult size in reproductive fitness of Semanotus japonicus (Coleoptera : Cerambycidae)"Applied Entomology and Zoology. 35(3). 323-331 (2000)
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[Publications] Ueda,M.and Shibata,E.: "Change in trunk water transport area of heavily pruned Hinoki cypress, Chamaecyparis obtusa"Japanese Journal of Forest Environment. 42(2). 57-60 (2000)
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[Publications] Fukumoto,H.and Kajimura,H.: "Effects of insect predation on hypocotyl survival and germination of mature Quercus variabilis acorns"Journal of Forest Research. 5. 31-34 (2000)
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[Publications] Kajimura,H.: "Discovery of mycangia and mucus in adult female xiphydriid woodwasps (Hymenoptera : Xiphydriidae) in Japan"Annals of the Entomological Society of America. 93(2). 312-317 (2000)
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[Publications] 福田秀志,豊田博,柴田叡弌: "愛知県の小牧山で大量発生したスギカミキリ"中部森林研究. 49(印刷中). (2001)