2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11460070
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
伊藤 進一郎 三重大学, 生物資源学部, 助教授 (90092139)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶村 恒 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助手 (10283425)
松田 陽介 三重大学, 生物資源学部, 助手 (30324552)
武田 明正 三重大学, 生物資源学部, 教授 (70024578)
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Keywords | 集団枯死 / カシノナガキクイムシ / ブナ科樹木 / Raffaelea quericivori / 水ポテンシャル / 通水阻害 |
Research Abstract |
ナラ類集団枯死の原因:枯死木の材変色部、坑道壁、またカシノナガキクイムシの幼虫と成虫の体表や菌のうから優占的に分離された菌について、その所属を検討した結果、既知のRaffaelea属10種とは分生子、分生子柄の形態が異なることから新種と判断し、R.quercivori Kubnono et Ito sp.nov.と命名した。この菌は、カシノナガキクイムシによって伝播されることが明らかとなった。またカシノナガキクイムシを人工飼料内で産卵させることに成功した。今後確実に繁殖させ、次世代を生産させる飼育方法が可能と考えられる。 ナラ類の枯死機構の解明:R.quercivoriに対するブナ科樹木の感受性の差異を明らかにする目的で、コナラ、ミズナラ、クヌギ(落葉性)、アラカシ、ウバメガシ、スダジイ(常緑性)の苗木に接種試験を行った。コナラは7本中1本が、ミズナラは5本が枯死し、その他の樹種は枯死しなかった。R.quercivoriは、すべての枯死木から再分離され、その病原性が確認された。ナラ類の枯死被害は、Raffaelea属とカシノナガキクイムシとが関与した世界で最初の事例である。接種後、枯死個体では水ポテンシャルが急激に低下したことから、通水機能に異常が発生し、辺材部の通水阻害によって萎凋、枯死することがわかった。接種後材部に形成される軸方向の変色と樹木の枯死との間には明白な関係がなかった。一方放射方向の変色は、樹木の枯死と密接に関連していることが明らかとなった。すなわち、樹種間の感受性差異は、放射方向への変色の拡大と関係していることが判明した。放射方向の変色はアラカシで最も小さく、ミズナラでは最も大きかった。また、アラカシでは通水可能な組織が広く、ミズナラでは狭かったことから、ミズナラは6樹種の中で最も通水阻害を引き起こし枯死しやすいR.quercivoriに感受性の高い樹種、逆にアラカシは最も感受性が低い樹種と考えられた。
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Research Products
(26 results)
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[Publications] 伊藤進一郎: "ブナ科樹木の集団枯死-菌類と昆虫の共生関係のなぞ-"日本菌学会西日本支部会報. 10. 16-22 (2001)
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[Publications] 伊藤進一郎: "現在問題となっているブナ科樹木の衰退、枯死"森林科学. 35(印刷中). (2002)
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[Publications] 伊藤進一郎: "ナラ枯れ被害に関連する菌類と枯死機構"森林科学. 35(印刷中). (2002)
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[Publications] 伊藤進一郎: "カシノナガキクイムシの形態の地域間比較"中部森林研究. 50(印刷中). (2002)
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[Publications] 梶村 恒: "養菌性キクイムシの生態と森林被害"森林科学. 35(印刷中). (2002)
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[Publications] 梶村 恒: "人工飼料を利用したカシノナガキクイムシの飼育の試み"中部森林研究. 50(印刷中). (2002)
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[Publications] Kubono, T.: "Raffaelea quercivori sp.nov.associated with mass mortality of Japanese oak,and the ambrosia beetle(Platypus quercivorus)"Mycoscience. 43(印刷中). (2002)
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[Publications] Mizuno, T.: "Production of the ambrosia beetle,Xyleborus pfelili(Ratzeburg)(Col.,Scolytidae),on semi-artificial diet"Journal of Applied Entomology. (印刷中). (2002)
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[Publications] 村田政穂: "Raffaelea属菌に対するブナ科6樹種の感受性の差異"中部森林研究. 50(印刷中). (2002)
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[Publications] 中根阿沙子: "コナラに対するRaffaelea属菌の接種法の検討"中部森林研究. 50(印刷中). (2002)
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[Publications] 奥田章子: "ナラ集団枯損被害林分におけるコナラ・ミズナラ根系について-カシノナガキクイムシの加害程度と外生菌根の形成状況の関係-"中部森林研究. 50(印刷中). (2002)
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[Publications] 武田明正: "ブナ科樹木の分布とその利用"森林科学. 35(印刷中). (2002)
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[Publications] 伊藤進一郎: "クヌギに対するカシノナガキクイムシの加害"日本林学会大会学術講演集. 112. 277 (2001)
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[Publications] 伊藤進一郎: "紀伊半島に発生したブナ科樹木の枯死"樹木医学会大会発表講演集. 6. 14 (2001)
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[Publications] 梶村 恒: "養薗性キクイムシの樹幹利用様式"日本生態学会講演要旨. 48. (2001)
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[Publications] Matsuda, Y.: "Morphological classification on Monotropoid mycorrhizas on Monotropastrum globosum"Third International Conference on Mycorrhizae. 3. 128 (2001)
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[Publications] 水野孝彦: "フィリピンザイノキクイムシの発育零点と有効積算温度"日本林学会大会学術講演集. 112. (2001)
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[Publications] 村田政穂: "ナラ類集団枯死被害の発病機構-ブナ科5樹種の苗木に対する接種試験-"日本林学会大会学術講演集. 112. 673 (2001)
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[Publications] 奥田章子: "ナラ類集団枯損被害発生林分におけるカシノナガキクイムシの加害程度と外生菌根の形成状況"樹木医学会大会講演要旨集. 6. 14 (2001)
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[Publications] 奥田章子: "ナラ類集団枯損被害林分におけるコナラ・ミズナラ根系について-菌根の形態類別と菌根形成率の季節変化-"日本林学会大会学術講演集. 112. 279 (2001)
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[Publications] 梶村 恒: "材を利用する昆虫とその共生菌-キクイムシ類とクビナガキバチ類を事例として-"日本林学会大会. 113(発表予定). (2002)
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[Publications] 梶村 恒: "人工飼育でわかったカシノナガキクイムシの行動生態"日本応用昆虫学大会. 46(発表予定). (2002)
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[Publications] 梶村 恒: "キクイムシ類の子供のサイズ"日本生態学会大会. 49(発表予定). (2002)
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[Publications] 村田政穂: "ブナ科樹木に対するRaffaelea sp.接種後の組織解剖学的観察"日本林学会大会. 113(発表予定). (2002)
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[Publications] 伊藤進一郎: "森をまもる-森林防疫50年の成果と今後の展望(分担:ナラ・カシ類の枯死被害に関連する菌類とその病原性"全国森林病害虫獣防除協会、東京(印刷中). (2002)
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[Publications] 梶村 恒: "里山の生態学-里山の成り立ちとその保全のために、シデコブシの花咲く東海の谷間から(分担:菌類を利用する昆虫)"名古屋大学大学出版会、名古屋(印刷中). (2002)