2001 Fiscal Year Annual Research Report
樹木における光合成律速因子の究明と光呼吸の制御に関する研究
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11460072
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Research Institution | KYUSHU UNIVETRSITY |
Principal Investigator |
小林 善親 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (90087594)
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Keywords | 光合成 / 光呼吸 / 樹木 / 電子伝達 / ストレス |
Research Abstract |
葉肉細胞におけるCO_2透過性や葉緑体の電子伝達系を流れる電子の数(流束)を非破壊的に測定することは、葉の光合成能力を解析する上で極めて有効な方法である。 本研究では、葉における光合成量子収率とCO_2ガス交換の同時測定によって葉緑体を流れる電子の数を定量的に測定し、葉緑体中のCO_2濃度、光呼吸活性、サイクリック電子伝達反応を測定する方法を開発した。また、タバコ形質転換体を用いて、葉肉細胞の光合成能力および植物の温度ストレス耐性能力について遺伝子レベルで解析した。さらに樹木の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子(fad遺伝子)のクローニングを行い、低温、高温ストレスによる脂肪酸不飽和化酵素遺伝子の発現を解析した。 上記の光合成・光呼吸・サイクリック電子伝達反応測定法を用いて、植物葉の膜脂質に含まれる脂肪酸組成とストレス耐性能力、光合成能力、光呼吸との関係を解析した。このような解析により、葉の飽和脂肪酸の相対含量の増加(トリエン脂肪酸含量の低下)は葉の高温ストレス耐性能力を向上させることを明らかにした。また、光呼吸は低炭酸ガス気相中において飽和し、光呼吸の飽和によって光化学系IIの量子収率の低下(PSIIのdown regulation)がおこることを見出した。 以上の研究により、(1)最大光合成活性(飽和光照射下のもとでの葉の最大光合成能力)は葉肉細胞のCO_2透過性と密接な関係があること、すなわち葉肉細胞の炭酸ガス透過性が葉の光合成律速因子であることが明らかになった。また、(2)水ストレスによって葉内の炭酸ガス濃度が低下すると、光呼吸が最大となり、同時にサイクリック電子伝達反応が誘導され、光化学系IIの量子収率が低下することが明らかになった。これらの結果は、葉肉細胞の脂肪酸組成や炭酸ガス透過性が植物のストレス耐性能力を決定する重要な因子であることを示唆している。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Y.Murakami et al.: "Trienoic fatty acids and plant tolerance of high temperature"Science. 287. 476-479 (2001)
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[Publications] U.Heber, et al.: "Protection of the photosynthetic apparatus against damage by excessive Illumination of homoiohydric leaves and poikilohydric mosses and lichens"J.Experimental Botany. 52・363. 1999-2006 (2001)
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[Publications] M.Tsuyama et al.: "PS II down regulation as affected by the maximal activity of photorespiration In leaves of C3 plants"Photosynthesis. (in press). (2002)
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[Publications] 共著(矢幡, 小林, 百島 他): "巨大クスノキの研究"太宰府天満宮クスノキ養生会議. 234 (2002)