Research Abstract |
木材の繊維に直交する方向(横方向)の物性は,木材の細胞の形状・配列といったセル構造体としての構造と,細胞壁の骨格とマトリックスで構成される基本構造および層構造といった複合体としての構造の両者に依存する。しかし,同じ密度に換算して比べたとき,樹種によって物性値が異なるいわゆる樹種特性は,早材部における細胞の形状・配列に強く依存している。本研究の目的は,物性として弾性率と誘電率を取り上げ,これらの物性と細胞の形状・配列の関係を理論的に考察し,樹種特性と異方性の現れる原因を解明することである。理論解析上,木材の細胞の形状,寸法,配列,空隙(密度)を,樹種を代表する1細胞の形態モデルに集約することが必要であり,そのためには,木材の横断面における光学顕微鏡写真をコンピュータ画像化し,それのフーリエ変換によって2次元パワースペクトルを求め,これより樹種を代表する1細胞の形態モデルを構築した。木材として針葉樹7樹種を選び,早材部について細胞の形態モデルを構築し,幾何学的パラメーターを決定した。前年度には,物性として弾性率を取り上げたが,本年度は,誘電率について解析を行なった。細胞壁の基本構造モデルについて,20℃,1MHz,全乾状態における誘電率を理論的に求め,この値と細胞形態モデルの放射および接線方向の繰り返し単位モデルを用いて,7樹種の誘電率を計算した。得られた結果は,誘電率の異方性や樹種特性を定量的に示し,異方性や樹種特性は,細胞壁と内こう空隙の配列様式と,細胞モデルの形状,特に要素角などの差異によって現れることが明らかとなった。
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