2000 Fiscal Year Annual Research Report
山地畜産を軸とした環境保全型アグロフォレストリ・システムの研究
Project/Area Number |
11460103
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Research Institution | KOCHI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
飯国 芳明 高知大学, 人文学部, 教授 (40184337)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 佳孝 農林水産省, 中国農業試験場, 主任研究官
櫻井 克年 高知大学, 農学部, 教授 (90192088)
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Keywords | アグロフォレストリ / シバ / 硬盤層 / 生物多様性 / 入会権 |
Research Abstract |
山地畜産を軸とした持続的アグロフォレストリ・システムの確立を目指して経済学,土壌学,生態学の各分野からアプローチを試みた.土壌分析では,高知県の奈半利町花田牧場,南国市白木谷斎藤牧場および島根県大田市三瓶山放牧場のシバ放牧地を対象に分析を行った.また,生態学的分析ではシバ地の拡大が生熊系に及ぼす影響を検討した.経済的分析では,三瓶山の牧野を支える社会システムの変遷に焦点を当てた分析を展開した. まず,土壌分析からは,造成シバ草地は造成後20年後には表層にルートマット,深さ20cm程度に牛の踏み固めによる硬盤層ができること,また,この間に粒状構造が発達し,透水・排水・保水などの物理環境が大幅に改善されること,さらに,化学的には貧栄養な土壌となるが,微生物相が変化して,貧栄養でも安定な土壌生態系が構築されることが明らかになった.ただし,三瓶山地区の「黒ボク土」土壌では硬盤層が形成されにくく、通気性・排水性の高い土壌であることから、上層と下層の水溶性アニオン・カチオン含有量の差もほとんど無かった。 生態系・景観の分析からは,シバ地放牧はすでに希少種となったオキナグサやサギソウなどの家畜が嫌う植物の保全機能があるほか,オオルリシジミやオオウラギンヒョウモン等のチョウやダイコクコガネなどの生息数の増加を促す機能も認められた.いずれも三瓶山における生物多様性の確保に貢献するものである. 経済的分析では,三瓶牧野の権利関係と新たな社会システムのあり方を検討した.三瓶山一帯には古くから入会地が展開しており,今後,山地畜産を一層発展させようとすれば入会権を整理する必要がある.また,近年の放牧では景観や生態系保全という市場の「失敗」に対応した放牧の再生が試みられている.今後は地元自治体や住民だけでなく国も取り込んだ新たな支援システムの確立を目指す必要がある.
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