1999 Fiscal Year Annual Research Report
分子マーカーを用いたブナ天然林の遺伝的多様性の解析
Project/Area Number |
11460149
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三上 哲夫 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (50133715)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 友彦 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助手 (40261333)
貴島 祐治 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (60192556)
小池 孝良 北海道大学, 農学部・附属演習林, 教授 (10270919)
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Keywords | ブナ / ミトコンドリアゲノム / RFLP / 遺伝的多様性 / 地理的クライン / 分子生態学 / イヌブナ / 進化系譜 |
Research Abstract |
日本産ブナ(Fagus crenata)の全分布域をほぼ網羅する16地域より採取したサンプル(新展葉)からtotal DNAを調製し、3種の制限酵素と5種のミトコンドリア遺伝子プローブの組み合わせによるRFLP(制限酵素断片長多型)分析を行った。得られた結果は以下のように要約される。1)供試したブナのミトヒンドリアゲノム型は11種に分類され、変異のパターンに明瞭な地理的クラインが認められる。2)四国、九州の太平洋側(高知、宮崎、鹿児島)で自然繁殖しているブナは、互いに同一のミトコンドリアゲノムを共有する。3)これに対して鳥取や滋賀、富山のブナのミトコンドリアゲノムは、全く別の系譜を辿って分化したと思われる。4)北海道、東北から新潟、栃木にかけて分布するブナのミトコンドリアゲノム型は、互いに類似しており、変異は小さい。5)福岡のブナは極めて限定された地域で繁殖しているにも拘わらず、高度のミトコンドリアゲノム多型が見出された。 花粉分析によれば、日本列島のブナは、約2万年前のいわゆる最終氷河期の最寒期には北緯38度以南の海岸線付近において、他の樹種のすきまに点在する状態で生育していたが、その後、日本列島の温暖化に伴って北へ分布域を拡大してゆき、現在のような生育相を確立したと考えられる。従って長い繁殖の歴史を持つ西南暖地では、ミトコンドリアゲノムの多様な系譜が分化したのに対し、伝播して未だ日の浅い関東、北陸、東北、北海道などの地域においては、ミトコンドリアゲノムの多型に乏しいというのが、本研究で得たデータから導かれる結論である。現在、イヌブナ、タイワンブナ、タケシマブナについても同様のRFLP分析を進め、アジア産ブナの遺伝的多様性の全容の解明を図っている。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] S. Kato: "Analysis of mitochondrial DNA of an endangered beech species, Fagus hayatae Palibin ex Hayata"New Forests. 19. 109-114 (2000)
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[Publications] T. Kubo: "Alterations in organization and transcription of the mitochondrial genomes of cytoplasmic male sterile sugar beet (Beta vulgaris L..)"Molecular and General Genetics. 262. 283-290 (1999)
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[Publications] Y. Onodera: "Heterogeneity of the atp6 presequences in normal and different sources of male-sterile cytoplasms of sugar beet"Journal of Plant Physiology. 155. 656-660 (1999)
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[Publications] S. Yamashita: "Resistance to gap repair of the transposon Tam3 in Antirrhinum majus ; a role of the end regions"Genetics. 153. 1899-1908 (1999)
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[Publications] S. Nishizawa: "Variable number of tandem repeat loci in the mitochondrial genomes of beets"Current Genetics. 37. 34-38 (2000)
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[Publications] T. Kubo: "The nad4L-orf25 gene cluster is conserved and expressed in sugar beet mitochondria"Theoretical and Applied Genetics. 100. 214-220 (2000)
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[Publications] 三上 哲夫: "花 ― 性と生殖の分子生物学 (日向 康吉 編)"学会出版センター (印刷中).
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[Publications] 三上 哲夫: "栽培植物の自然史 (山口 裕文 編)"北海道大学図書刊行会 (印刷中).