2000 Fiscal Year Annual Research Report
分子マーカーを用いたブナ天然林の遺伝的多様性の解析
Project/Area Number |
11460149
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
三上 哲夫 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (50133715)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 友彦 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助手 (40261333)
貴島 祐治 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (60192556)
小池 孝良 北海道大学, 農学部・附属演習林, 教授 (10270919)
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Keywords | ブナ / ミトコンドリアゲノム / RFLP / 遺伝的多様性 / 遺伝的脆弱性 / 分子生態学 / タイワンブナ / 進化系譜 |
Research Abstract |
台湾北部のLalashan自然保護区に自生するタイワンブナ(F.hayatae)15個体の新展葉サンプルから全DNAを抽出し、ミトコンドリアDNAのRFLP分析を試みた。用いたプローブは5種のミトコンドリア遺伝子プローブである。15種のプローブ/制限酵素の組み合わせのいずれにおいても、今回供試したタイワンブナ個体間で多型は検出されず、自然保護区に自生するタイワンブナのミトコンドリアに関する遺伝的変異が極めて小さい事が強く示唆された。周知のように、1970年6月、メキシコ湾に臨むフロリダ、アラバマ、ミシシッピ州のトウモロコシ畑を胡麻葉枯病が襲った。被害を受けたトウモロコシはすべてTexas型細胞質雄性不稔ミトコンドリアゲノムを利用したハイブリッド品種であった。病原菌の胞子はまたたく間に合衆国を北上し、さらにはカナダにまで深刻な被害が及んだ。これは、均一なミトコンドリアゲノムから成る植物集団の、ストレスに対する遺伝的脆弱性を端的に示す実例であり、タイワンブナについても同様の危険性を認識する必要があろう。またタイワンブナのミトコンドリアDNAの分子構造は日本の西南部(高知、宮崎、鹿児島)に分布するブナ(F.crenata)のDNA構造と酷似する事が判明した。F.crenataとF.hayataeの2種は共にブナ属のLucida節に分類されるが、進化の過程でそれぞれ独自の系譜を辿って分化したと考えられる。ただ、化石の証拠等から第3紀最新世(鮮新期)にはF.crenataとF.hayataeの祖先種が共に日本列島南部で同所的に分布していたことが推定されている。今回明らかとなったミトコンドリアゲノムの類似性がこれら2種間の交雑に起因するのか、あるいはこれら2種が一つの母系を共有することによるのかというテーマは今後の興味深い研究課題である。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] S.Nishizawa: "Variable number of tandem repeat loci in the mitochondrial genomes of beets."Current Genetics. 37. 34-38 (2000)
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[Publications] T.Kubo: "The nad4L-orf25 gene cluster is conserved and expressed in sugar beet mitochondria."Theoretical and Applied Genetics. 100. 214-220 (2000)
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[Publications] T.Kubo: "The complete nucleotide sequence of the mitochondrial genome of sugar beet (Beta vulgaris L.) reveals a novel gene for tRNACys (GCA)."Nucleic Acids Research. 28. 2571-2576 (2000)
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[Publications] S.Kato : "The chloroplast genomes of azuki bean and its close relatives : a deletion mutation found in weed azuki bean."Hereditas . 132. 43-48 (2000)
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[Publications] S.Kato: "Analysis of mitochondrial DNA of an endangered beech species, Fagus hayatae Palibin ex Hayata."New Forests. 19. 109-114 (2000)
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[Publications] T.Mikami: "Molecular analysis of cytoplasmic male sterility in beets."Acta Horticulturae. (in press). (2000)
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[Publications] 三上哲夫: "花-性と生殖の分子生物学(日向康吉 編)"学会出版センター(印刷中). (2001)
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[Publications] 三上哲夫: "栽培植物の自然史(山口裕文 編)"北海道大学図書刊行会(印刷中). (2001)