2000 Fiscal Year Annual Research Report
細胞分裂過程における染色体会合蛋白質の動態に関する分子細胞生物学的研究
Project/Area Number |
11460157
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
池上 晋 広島大学, 生物生産学部, 教授 (80011980)
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Keywords | イトマキヒトデ / 卵母細胞 / 燐酸化 / 細胞分裂 |
Research Abstract |
卵は受精後の胚発生過程に必要な大量なRNAを保蔵している。核内のRNAの移動や複合体形成の過程で核酸結合タンパク質が機能しているものと思われるが、それらの分子的実体は不明の点が多い。当研究室ではイトマキヒトデ卵母細胞中に、DNAとRNAに結合する性質を有する、分子量約39kDaの核タンパク質を見い出し、これをNucleic acid-associated protein(NAAP)と命名した。NAAPの配列中には二つの酸性アミノ酸クラスターの間に塩基性アミノ酸から成る双極性の核局在化シグナルが含まれ、C末端領域には核酸結合部位と思われる配列が存在する。NAAPは、卵母細胞が成熟し、減数分裂する過程でリン酸化されることが明らかにされている。本研究では、卵成熟過程におけるNAAPのリン酸化部位の詳細な解析を行った。その結果、卵の成熟的減数分裂過程で生じるNAAPのリン酸化は高度に調節されていることが明らかになった。本研究の結果から、卵成熟過程において、NAAPの4つのアミノ酸残基がリン酸化されることがわかった。このうちSer^<158>とThr^<163>は2つの塩基性領域にかこまれた双極性核局在化シグナル領域に存在していた。核局在化シグナルは一般的に、タンパク表面でループを作っており、この部分がリン酸化を受けるとタンパク構造が大きく変化すると考えられている。したがって、減数分裂の分裂期特異的にSDS-PAGEでみられたNAAPの見かけの分子量の変化は、Ser^<158>とThr^<163>がリン酸化されたため引き起こされたことが示唆された。さらに、この2つのアミノ酸のリン酸化がNAAPの核移行に密接に関連していることも強く示唆された。
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[Publications] K.Matoba,Y.Matsumoto,T.Hongp,Y.Nagamatsu,H.Sugino,T.Shimizu,T.Takao,Y.Shimonishi.and S.Ikegami: "Chemical structure of nuclear proteins which are phosphorylated during meiotic maturation of starfish oocytes."Biochemistry. 39(21). 6390-6400 (2000)