2000 Fiscal Year Annual Research Report
原虫感染に感受性を示すマウスに潜在する初期防御抵抗性の分子免疫学的解明
Project/Area Number |
11470064
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
仙道 富士郎 山形大学, 医学部, 教授 (80091833)
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Keywords | Trypanosoma cruzi / Leishmania major / neutrophil / 初期防御抵抗性 / cytokine / mRNA |
Research Abstract |
原虫感染に感受性を示すマウスに潜在する初期防御抵抗性を解明することを目的として、Trypanoma cruziに感受性を示すと言われているBALB/cおよびC57BL/6マウスの末梢血好中球枯渇群と非枯渇コントロール群にT.cruziを感染させ、初期抵抗性における好中球の関与について検討した。その結果、昨年度は、1)BALB/cでは、T.cruzi感染時に好中球枯渇処理をすると全ての個体が死亡したのに対して、非枯渇群では約40%が自然治癒した。一方、2)C57BL/6では、好中球枯渇処理群では約30%が生存したのに対して、非枯渇群では全てが死亡することを明かにした。この結果は、両系統マウス間で好中球枯渇処理のT.cruzi感染に及ぼす影響が全く逆に作用することを示している。今年度は、好中球および脾臓における各種サイトカイン等のmRNAの発現について検討した。その結果、1)好中球枯渇BALB/cマウスの牌臓では、IL-2,IFN-γ,IL-12p40,TNF-α等のTh1 typeのサイトカインmRNAの発現が減衰し、IL-10等のTh2 typeのサイトカインmRNAが増加していた。これに対して、2)C57BL/6マウスでは、IL-10mRNAはコントロール群よりも増加していたにもかかわらず、Th1 typeのサイトカインmRNAも増加していた。さらに、3)T.cruzi感染BALB/cマウスの好中球は、IL-12p40,IFN-γ,TNF-αおよびTh1 chemoattractive chemokine mRNAを発現していた。これに対して、C57BL/6マウスのそれでは、上記サイトカイン等のmRNAは発現していなかった。これらの結果は、BALB/cとC57BL/6マウスでは、好中球枯渇処理のT.cruzi感染に及ぼす作用が全く逆方向に向いており、好中球がT.cruzi感染に対する宿主免疫反応をTh1typeまたはTh2 typeのいずれの方向に向かうかを制御することによるものと推察された。現在は、さらにLeishmania majorにおける好中球枯渇処理の影響についても検討中である。
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