Research Abstract |
【方法】北海道の鷹栖町において,1992年および1995年に69歳〜81歳(1992年時)の高齢者全数769名を対象とし,質問票による調査を実施した.解析対象としたのは,2回の調査に回答した496名(男性219名、女性277名)であった.質問票には,基本的属性(居住形態、職業など),過去一年間におけるストレスフル・ライフイベントの経験(16項目),ソーシャルネットワーク(別居子,友人・親戚,近隣との交流)およびサポート(介護,情緒的,提供)についての項目,健康状態に関する項目として,Zungのうつスケール(SDS),主観的健康状態,病気の数,ADL,IADLについての項目が含まれていた.1995年時のSDS得点を従属変数として,1992年時のSDS得点を共変量とし,サポートの有無などの関連要因を独立変数とした共分散分析を行った. 【結果と考察】1995年時のSDS得点の平均は35.46であった.女性の平均36.12は男性34.58よりも有意に高く,また,男女とも1992年時(男36.96,女38.57)に比べて1995年時のSDS得点は低かった.1992年時と1995年時のSDS得点間の相関係数は0.36(p<.001)であった.表に,男女別に1995年時のSDS得点に対する共分散分析の結果を示す.経験されたライフイベントの数は男女どちらにおいても有意であり,多く経験されるほどSDS得点は高かった.そのほか,男性では配偶者の状態と主観的健康状態が有意で,配偶者が病気または死別していること,健康状態が良くないことによりSDS得点が高かった.男性ではソーシャルネットワークおよびサポートに関する要因は有意ではなかった.一方,女性では親しい友人・親戚の有無,サポートの提供,主観的健康状態,病気の数,IADLが有意で,親しい友人・親戚がいない,サポートを提供していない,身体的健康状態が良くない,IADLが低下していることにより,SDS得点が高かった.この結果から,ライフイベントの経験によるストレスは男女とも抑うつのリスク要因であること,そしてソーシャルサポートネットワークの希薄さは特に女性において抑うつのリスク要因であることが考えられる.
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