2000 Fiscal Year Annual Research Report
肝がん多発県における病因論的肝がん対策樹立に関する調査・研究 -県下24市町村での検診の試行と、疫学モデルによる介入の効果評価--
Project/Area Number |
11470107
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉澤 浩司 広島大学, 医学部, 教授 (30109954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 惠子 広島大学, 医学部, 助手 (50304415)
守屋 尚 広島大学, 医学部, 講師 (40243563)
田中 純子 広島大学, 医学部, 講師 (70155266)
中西 敏夫 広島大学, 医学部・附属病院, 助教授 (20136089)
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Keywords | 肝がん / 検診 / Hcv検診 / Hcvキャリア |
Research Abstract |
本研究は、健常者集団内に潜在するHCVキャリアを検診により組織的に見出し、肝がん死亡の減少をめざした肝炎、肝がん対策モデルを樹立し、その有効性の評価を行うことを目的としている。本年度、得られた結果は次の通りである。 1.広島県では今年度までに34市町村でHCV検診が実施されるまでに至った。昨年度集計・整理した資料を元に記載不備を補充し、今年度の資料を追加したものを集計中である。この成績から、高年齢層におけるHCV感染の実態がはじめて明らかにできると考えられる。一方、広島市ではH10年度から基本健康診査に組み込みHCV検診を開始している。当該年度までに得られた受診者数は30,341人(40歳以上人口の5.9%)であった。我々が提示したC型肝炎ウイルス検査の指針では、最終的に「ウイルスに感染している」「感染していない」の2群に分類される。第一次スクリーニングによるHCV抗体陽性率は9.8%(2962人)であったが、最終的にHCVキャリアと判定されたのは732人(2.4%)であった。このうち医療機関への受診が確認された449人の臨床診断から、肝がん3例・肝硬変17例が見い出された。また、検診受診前に既に肝疾患患者として治療を受けていたのは62人(14%)にすぎず、検診を契機に新らたに見出されたHCVキャリアが8割を超えることが確認された。 2.県内A町(HCV高度浸淫地区)の検診を契機に発見されたHCVキャリア(236例)を対象とし、腹部超音波検診(11・12年度)および口腔粘膜疾患検診(12年度)を実施した結果、腹部超音波検診を希望した90例中、肝硬変3例、肝がん1例を見出した。また、口腔粘膜疾患検診を希望した59例中、前癌病変と言われる口腔扁平苔癖を5例(8.5%)、口腔白板症を1例(1.7%)を見出した。以上の成績から、HCV感染者では、口腔粘膜病変についても定期的に経過観察を行う必要があることが明らかとなった。 3.一般健常者集団の中から既に見出しているHCVキャリア集団及びC型慢性肝疾患患者症例の病期と進展を、肝臓専門医の協力のもとにプライバシーの保持を重視しながらデータベース化し、この成績をもとに長期慢性肝疾患の病態推移を推計するための数理モデルの構築を行なった。その結果、40歳時点における無症候性キャリアは、60歳になると男性では約1割(10.6%)「肝がん」へ進展し、女性では4.5%が「肝がん」へ進展すると推計された。また、男性では60歳以上、女性では70歳以上の年齢層で肝発がん率が著しく高くなる成績が得られた。慢性肝炎からの肝がん罹患率については現在推計中である。
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[Publications] 吉澤浩司: "日本の慢性肝炎の現状"慢性肝炎診療のためのガイドライン. 4-5 (2000)
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[Publications] 吉澤浩司: "ウイルス肝炎発生の動向調査"日本公衆衛生雑誌. 47(10). 461-462 (2000)
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[Publications] 吉澤浩司: "肝癌検診-病因論に基づいた検診のあり方とHCV感染の疫学的背景"肝臓病学の進歩. 26. 54-64 (2000)
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[Publications] S.Fujiwara: "Prevalence of Anti-hepatitis C Virus Antibody and Chronic Liver Disease among Atomic Bomb Survivors"RADIATION RESEARCH. 154. 12-19 (2000)
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[Publications] 守屋尚: "院内感染発生後の対応 5)B型肝炎"医薬ジャーナル. 36・8. 127-129 (2000)
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[Publications] 吉澤浩司: "総括報告書 非A非B型肝炎の予防・疫学に関する研究"平成11年度厚生省新興・再興感染症研究事業 研究報告書. (2000)
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[Publications] 田中純子: "広島県域および広島市におけるC型肝炎ウイルス検査実施状況"平成11年度厚生省新興・再興感染症研究事業 研究報告書. 15-21 (2000)
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[Publications] 田中純子: "HCVキャリアの自然史解明の試み"平成11年度厚生省新興・再興感染症研究事業 研究報告書. 30-35 (2000)
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[Publications] 吉澤浩司: "非A非B型肝炎の予防、疫学に関する研究"平成11年度厚生省新興・再興感染症研究事業 研究報告書. 1-8 (2000)
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[Publications] 秋葉隆: "血液透析療法における院内感染防止対策の現況"透析会誌. 33・10. 1303-1312 (2000)
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[Publications] 吉澤浩司: "医療機関就職時のウイルス抗体検査"日本医事新報. 3993. 97-98 (2000)
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[Publications] 石川武憲: "広島県内医療機関におけるHIV感染症の医療に関する実態調査(第2回)"広島医学/別冊. 53・12. 1181-1193 (2000)
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[Publications] 吉澤浩司: "HCV検診で発見されたHCVキャリアを対象とした腹部超音波検診および口腔粘膜疾患検診"広島医学/別冊. 53・12. 1201-1204 (2000)
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[Publications] Fumio Tsuda: "IgM-class antibodies to TT virus (TTV) in patients with acute TTV infection"Hepatology Research. 19. 1-11 (2001)
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[Publications] 吉澤浩司: "血液の安全性の向上について-ウイルス感染防止の視点から-"ウイルス肝炎財団. 56 (2000)
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[Publications] 吉澤浩司: "病因論に基づいた肝炎・肝がん対策/講演録"財団法人 岩手県予防医学協会. 15 (2001)