2001 Fiscal Year Annual Research Report
細胞防御系ハウスキーピング酵素Class III ADHのアルコール代謝における役割-ノックアウトマウスを用いるin vivo実験と酵素の活性調節機構解明のためのin vitro実験-
Project/Area Number |
11470120
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Research Institution | NIPPON MEDICAL SCHOOL |
Principal Investigator |
長谷場 健 日本医科大学, 医学部, 講師 (50156329)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 伊佐夫 神奈川歯科大学, 歯学部, 助手 (30277917)
亀山 孝二 日本医科大学, 医学部, 助手 (60150736)
真下 啓子 日本医科大学, 医学部, 助手 (90113000)
黒沢 則夫 創価大学, 工学部, 助教授 (30234602)
清水 昭夫 創価大学, 工学部, 助教授 (20235641)
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Keywords | Class III ADH / ノックアウトマウス / アルコール代謝 / 遺伝子解析 / リコンビナントADH / 活性・構造相関 / Class I ADH / 顕微分光酵素活性測定 |
Research Abstract |
1.Class III ADHノックアウトマウス(Adh3-/-)を用い、本ADHの血中アルコール(BAC)動態と急性Alc中毒における役割をin vivoで検討した。5g/kgでの死亡率はAdh3-/-がWildより高かった。BACは1〜4.5g/kgの投与量で両系統間に有意な差が認められ(p<0.005〜0.0001 by ANOVA)、β値はAdh3-/-でWildに比べ急峻な投与量依存的低下を示した(p<0.005)。γ値はWildでほぼ一定の値を示したが、Adh3-/-では用量依存的に増大した(p<0.0001)。これらの結果から、Class IIIは、投与量によらず体内分布係数γ値を一定に保ち、中等量以上の飲酒時(3g/kg以上)のAlc代謝速度の保持に重要な役割を果たし、急性Alc中毒の発症に対する重要な生体防御因子となっていることが示された。 2.マウスClass III gene(Adh3)をcloningし、得られた3clones、5'Sac1、Acc-2、Sac1-Aの塩基配列を決定した。これらは合わせて約32kbのゲノム領域(MADH3GC領域)をカバーした。MADH3GCの5'側約4kb中にはClass IIの3つのexonが存在し、約14〜24kbの間の領域にはClass IIIの9つのexonと8つのintronが配置していた。また、exon1上流2.2kと下流0.6kの領域についてmotif配列の検索を行ったところ、ユニークなものとしてexon1の上流0.3〜0.4kbに5個のXRE配列(毒物で発現誘導)、同じく上流1.4kb付近にSTAT配列(成長ホルモンやプロラクチン)、さらに上流1.7〜2.1kbに5個のSRY配列(精巣決定因子Sry)が見出された。また、housekeeping geneにも拘らず推定転写開始部位から1.1kb上流にTATA box配列が認められ、そのpromoter構造がヒトClass IIIとは異なっていた。 3.Recombinant(r)mouse Class IおよびIIIADHの大腸菌発現法と精製法を確立し、それぞれ2.3、4.2mg/L培地の収量を得た。両rADHのKm、Vmaxは共に肝由来の各ADHにそれぞれ近似した。遠紫外部190-250nm領域のCDスペクトルは両rADHでほぼ一致し、二次構造の類似性が示唆された。熱変性過程を二次構造と活性の変化で追跡した結果、両者とも共同的に変化したが、rClass IIIがIより変性温度は低く、熱に対して不安定であった。一方、NaCl対してはrClass Iが500mM以上で急激な活性低下を示し、より不安定であった。t-BuOH(TBA)存在疎水環境下でこれらADHのCDスペクトル変化を調べたところ、いずれも顕著な変化は観察されなかった。従って、疎水環境下で見られるClass IIIの活性増大、Class Iの活性減少は、二次構造レベルでの大きな構造変化を伴うものでないことが示唆された。 4.組織細胞内における酵素の構造・活性を測定するための第一歩として、組織の暗視野観察と蛍光による酵素活性測定を同時に可能にする顕微分光測定装置を開発した。酵素反応液(Yeast ADH,NAD,ethanol,pH7.4 buffer)1μlをmicrohole付きslide glassに入れ恒温ステージ上で蛍光測定(EX380,EM470nm)と波形(300-700nmのスペクトルをファイバー同時分光)の検討を行ったところ、470nmのピークが経時的に増高し、酵素反応が確認された。反応液に1/400量のリポソーム添加によって活性の抑制が観察されたが、反応液と同量のリポソーム添加では、反応液のみの場合と類似の波形並びに同程度の活性が観察された。従って、ADHはリポソーム微量添加ではその溶解による疎水物質活性阻害が、リポソーム構造の存在下では組織類似の溶液構造ならびに疎水性条件での活性化が示唆された。
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[Publications] 長谷場 健: "アルコール代謝とClass IIIアルコール脱水素酵素(ADH3)"日本アルコール・薬物医学会雑誌. 36・4. 278-279 (2001)
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[Publications] T. Haseba, K. Mashimo, Y. Ohno, G. Duester: "Contribution of Class III ADH to alcohol metabolism - in vivo evidence from the knockout mouse-"Alcoholism (ISBRA2002 proceading). (予定).
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[Publications] Mashimo, K., Sato, S., Ohno, Y.: "Acute cytotoxic effects of ethanol on cultured mouse myocardial cells in a monolayer-Enzymatic, chronotropic and ultrastructural studies-"Jpn. J. Alcohol Studies & Drug Dependence. 36(2). 142-153 (2001)
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[Publications] 真下啓子, 佐藤茂, 大野曜吉: "慢性エタノール曝露培養心室筋細胞の拍動数とミトコンドリアの増大"Jpn. J. Alcohol Studies & Drug Dependence. 36(4). 322-323 (2001)