原因不明の突然死におけるイオンチャンネル遺伝子変異に関する研究

1999 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 11470121
• Research Category: Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
• Research Institution: Osaka Medical College
• Principal Investigator: 鈴木 廣一 大阪医科大学, 医学部, 教授 (60171211)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 相馬 義郎 大阪医科大学, 医学部・生理学, 助手 (60268183) ; 辻 洋子 大阪医科大学, 医学部, 助手 (20309149) ; 西尾 元 大阪医科大学, 医学部, 講師 (90253260) ; 上野 易弘 神戸大学, 医学部, 教授 (30184956) ; 菱田 繁 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10068463)
• Keywords: 心臓イオンチャンネル / 遺伝子変異 / 突然死

Research Abstract

ここ数年当研究室で経験した死因不明の若年突然死7例について、疾患(QT延長症候群:LQT)の原因としての異常が報告されている心臓イオンチャンネル遺伝子(HERG、KVLQT、SCN5A:以下LQT関連遺伝子)と、その他のチャンネル遺伝子(Kir6.2、GIRK1、GIRK4、MAXIK)にみられる変異を検討した。LQT関連遺伝子には多くの変異がLQTの原因として報告されており、これらの変異をSSCP法で検索したが、いずれの事例にも無害な中立多型のほかは検出されなかった。一方、LQTなどの疾患との関連が報告されていないその他の遺伝子についても検討した結果、GIRK4に興味ある変異が検出された。それは、イントロン5'側の+7位に、C→tトランジションが突然死例に有意に高頻度でみられたことである(突然死例7例中4例、対照群100例中12例、Fisherの直接確率検定でp=0.0092)。
この変異は、野生型のスプライスドナー領域の配列AG・gtaaggcgcttgに新たなドナー配列AG・GTAAG・gtgcttgを生み出している可能性がある。ドナー領域はAG・gtaaggがコンセンサス配列であるが、AG・gtgcttも低頻度ながら存在しているとされる。この新しいドナー領域もスプライスの際に使用されると仮定するなら、フレームシフトが生じ、5塩基分長いmRNAとなると同時に、次のエクソンにストップコドンが生じることが予想される。この仮説を検証するために、RT-PCR法で5塩基分長い異常mRNAの検出を試みたが、検出されなかった。この変異にいろいろな条件が重なったときに突然死する可能性も考えられ、今後は他機関の共同研究者の協力も得て、事例を増やすとともに、自律神経系の情報伝達に関わるレセプター遺伝子の異常についても検討する予定である。

Research Products

• [Publications] Nishio,H.et al.: "Expression of Myosin-binding Phosphatase in Heart Myofibrils"6th Indo Pacific Congress on Legal Medicine and forensic Sciences(Kobe,1998)proceedings. 680-682 (1999)
• [Publications] Tamura,A.et al.: "Determination of the Repeat Structure of de novo Alleles Observed in Three STRs(FGA,HUMTH01,vWF)"6th Indo Pacific Congress on Legal Medicine and forensic Sciences(Kobe,1998)proceedings. 695-697 (1999)
• [Publications] Ashida,A.et al.: "Erythrocyte P1 group artigen expression in VTEC-associated hemolytic uremic syndrome"Clinical Nephrology. 51・2. 73-76 (1999)
• [Publications] 辻 洋子 他: "陳旧死体の毛髪からのDNA抽出及びSTR判定"DNA多型. 7. 29-33 (1999)
• [Publications] 田村明敬 他: "DIS80(MCT118)で、母と子に共通するバンドが見られなかった例"DNA多型. 7. 59-62 (1999)
• [Publications] 西尾 元 他: "心臓イオンチャンネル遺伝子変異の検討"DNA多型. 7. 265-269 (1999)
• [Publications] Nishio,H.et al.: "Possible involment of calcineurin,protein kinase C,and src-family kinases in angiotensin II-induced tyrosine phosphorylation of p130cas in rat cardiac muscle"Legal Medicine. 1・2. 105-110 (1999)
• [Publications] Nishio,H.et al.: "Cyclosporin A attenuates angiotensin II-induced tyrosine phosphorylation in heart"J.Biochem.Mol.Biol.Biophys.. 3. 243-249 (1999)
• [Publications] Nishio,H.et al.: "Immunohistochemical study of tyrosine phosphorylation signaling in Hassall's corpuscles of the human thymus"Acta Histochemica. 101. 421-429 (1999)
• [Publications] Tamura,A. et al.: "Haplotype analysis of de novo allele at a vWF STR loci"Legal Medicine. 1・3. 188-192 (1999)
• [Publications] 鈴木廣一: "最新電気泳動実験法"医歯薬出版株式会社(日本電気泳動学会編集). 470 423-425 (1999)
• [Publications] 鈴木廣一: "スタンダード輸血検査テキスト"医歯薬出版株式会社. 78-82 (1999)