2000 Fiscal Year Annual Research Report
筋ジストロフィー骨格筋に誘導されたユートロフィンの発現機構の解明と治療への応用
Project/Area Number |
11470153
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
武田 伸一 国立精神・神経センター, 神経研究所・遺伝子疾患治療研究部, 部長 (90171644)
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Keywords | ユートロフィン / ジストロフィン / mdx mice / DMD / アデノウイルスベクター / 免疫応答 / サイトカイン / 炎症反応 |
Research Abstract |
我々は骨格筋に対するアデノウイルスベクターを用いた遺伝子導入法を確立する過程でDuchenne型筋ジストロフィーのモデル動物でジストロフィンを欠損しているmdxマウス骨格筋にアデノウイルスベクターを導入したところ、筋変性及び再生筋線維に認められる中心核線維が減少し、表現型が改善していることを見出した。この現象はウイルスベクターを用いて遺伝子導入を行った場合に、遺伝子産物に対する免疫反応が起こり、ジストロフィンのホモログであるユートロフィンの発現が増強されるためであることを明らかにした(Hum Gene Ther 11:669-680,2000)。ことにユートロフィンの発現増強において、どのサイトカインが関与するか検討した。まず、CD4陽性T細胞のTh1サブセットへの分化に関与するIFN-γとIL-12及びTh2サブセットへの分化に関するIL-4の投与を行ったが、ユートロフィンの発現には全く変化はなかった。次にアデノウイルス感染組織で検出され、炎症性筋疾患や再生筋などユートロフィンが発現している組織で検出されるIL-6に注目し、投与実験を行ったところ、新生仔mdxマウス骨格筋でユートロフィンの発現増強が検出された。IL-6によるユートロフィンの発現増強は投与量依存的であることから、IL-6が直接骨格筋に作用している可能性が示唆された。但し、正常新生仔マウス骨格筋にIL-6の投与を行ってもユートロフィンの発現増強は起きなかったことから、他のサイトカインがIL-6と相加的に作用したときに、ユートロフィンの発現が誘導される可能性が考えられる。現在、抗IL-6抗体の投与により、アデノウイルスベクターの投与に伴うユートロフィンの発現増強が抑制されるかどうか検討している。今後の問題は、IL-6からユートロフィンの発現に至る細胞内シグナル伝達機構の解明である。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Iwao M et al.: "Thymic atrophy in laminin-alpha-2 chain deficient mice is a result of..."Immunology. 99. 481-488 (2000)
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[Publications] Ikemoto M et al.: "Space shuttle flight (STS-90) enhances degradation of rat myosin heavy..."FASEB J. (in press).
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[Publications] Yokota T et al.: "Aquaporin-4 is absent at the sarcolemma and at perivascular astrocyte..."Proc.Japan Acad. 76B. 22-27 (2000)
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[Publications] Yamamoto K et al.: "Immune response to adenoviral-delivered antigens upregulates utrophin....."Human Gene Therapy. 11. 669-680 (2000)
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[Publications] 宮越友子,武田伸一: "筋衛星(サテライト)細胞と遺伝子性筋疾患の遺伝子治療"神経研究の進歩. 45. 54-62 (2001)
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[Publications] 武田伸一: "ポストゲノム医療の展望:総論 神経疾患"日本臨床. 59. 19-30 (2001)
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[Publications] 武田伸一 他: "筋肉細胞、遺伝子治療開発ハンドブック"株式会社 エヌ・ティー・エス. 1061 (1999)