2000 Fiscal Year Annual Research Report
大動脈瘤破裂診断システムの開発と破裂予防に関する実験的研究
Project/Area Number |
11470267
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田林 晄一 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (90142942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 斉 東北大学, 医学部・附属病院, 講師 (80282127)
井口 篤志 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (90222851)
佐藤 正明 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30111371)
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Keywords | elastase-induced aneurysm model / pipette吸引法 / 局所壁弾性率 / 血管内超音波エコー / 壁変動率 / Matrix metalloproteinase(MMP) |
Research Abstract |
[目的]大動脈瘤の病態は主に形態的評価でなされている。瘤の拡張、破裂は壁強度と力学的ストレスのバランスで決定される。この研究目的は大動脈瘤モデルを用いた血行力学的解析による瘤拡張のメカニズムの解明である。また近年、瘤病態との関連が想定されているMatrix metalloproteinase(MMP)の意義を考える。 [方法]Wistar rat elastase誘発腹部大動脈瘤モデルを作成し、以下の評価を行った。1.pipette吸引法による壁弾性率計測、2.血管内超音波エコーによる壁変動率計測、3.組織学的評価、4.MMP-2、-9活性測定。 [結果]大動脈径は未処置例1.66±0.25mm(n=9)、注入直後2.33±0.25mm(n=9)、7日後5.83±1.45mm(n=20)、14日後6.13±1.55mm(n=15)であった。elastase注入直後から多くは壁変動が消失した。局所の壁弾性率は未処置例60.47±22.86kPa(n=5)に対し、7日後20.59±6.92kPa(n=5)、14日後94.72±5.62kPa(n=5)で、壁complianceは初期に増加し、その後著明に減少した。瘤壁では弾性板の減少、消失、外膜を中心とした著明な繊維化による壁厚の増加を認めた。MMP-2は最大拡張部で、MMP-9は瘤辺縁部で増加する傾向があった。 [考察]この大動脈瘤モデルでは壁complianceが著増した時期に瘤形成が起こる。その後、繊維化などの血管再構築による壁強度を高める生体反応が働き拡張が抑制される。MMPは血管再構築に関与していると考えられた。血行力学的ストレスは、最大拡張部よりむしろ瘤辺縁部と考えられることから辺縁部における壁強度が瘤伸展、破裂に影響をする因子の一つと考えられた。壁complianceの変化は壁変動には反映されなかったことから、今後有限要素解析などによる壁ストレスの分布の検討を行い、そのバランスを評価する必要がある。
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