2001 Fiscal Year Annual Research Report
慢性脳循環不全で生じる脳室拡大と特発性常圧水頭症との病態としての関連性の検討
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11470292
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Research Institution | Kochi Medical School |
Principal Investigator |
美馬 達夫 高知医科大学, 医学部・附属病院, 講師 (30192363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大河原 重雄 自治医科大学, 医学部, 教授 (60049088)
豊永 晋一 高知医科大学, 医学部, 助手 (90335927)
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Keywords | 正常圧水頭症 / 脳室拡大 / 脳萎縮 / 脳虚血 / 脳高次機能 / 髄液シャント / 砂ネズミ / ラット |
Research Abstract |
正常圧水頭症(NPH)は、脳内に過剰に貯留した髄液を腹腔などへ流すシャント手術を施行することで、痴呆、歩行障害、尿失禁の症状を改善するため、治療可能な痴呆の一つとして有名であるが、脳梗塞後の脳萎縮による脳室拡大と、高齢者に発症する原因不明の特発性NPHとを区別することは、実際的には極めて困難である。我々は「脳梗塞後の脳萎縮にはNPH病態が合併し、シャント術による髄液排除が症状改善に程度の差はあるが効果的である」という仮説をたて、これまで、砂ネズミ15分間前脳虚血後モデルを使用し、虚血後1ヶ月後の高次機能障害が、大槽からの髄液の一過性排除で、3日間機能が有意に改善することを、実験的に確認してきた。 平成13年度は、同様の実験モデルを用い、砂ネズミに対する、シャント術を施行することで、永続的に機能の改善が見られるかを検討した。砂ネズミに対して、脳室内へのマイクロ注入装置を頭蓋に固定し、脳室から腹腔へチューブを通す手術を行ったが、全ての動物(n=10)が、1週間以内に、頭蓋上のマイクロ注入装置を外してしまい、失敗に終わった。続いて、大槽内へマイクロチューブを挿入し腹腔へチューブを通す手術を施行したが(n=10)が、これも全例が、翌日から1週間以内に体重の減少とともに死亡し、70g前後の小動物にはこのシャント手術は侵襲が強過ぎると判断した。砂ネズミを用いたシャント術を断念し、次に、ラットを用いて、慢性的な脳血流の低下モデルにて、認知障害が砂ネズミと同様に生じるかを検討した。両側椎骨動脈を凝固閉塞し、両側の頸動脈をコイルにて狭窄させ、脳血流を術前の60%-70%に下げるモデルを用いたが、残念ながら、1ヶ月後の高次機能障害は生じなかった。プルシネリのモデルによる20分間の前脳虚血も施行したが、砂ネズミで見られた長期にわたる高次機能障害は認められなかった。
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