2001 Fiscal Year Annual Research Report
インスリン受容体基質(IRS)を介するシグナルの骨代謝調節機構の解明-IRS-1および-2 ノックアウトマウスを用いた検討-
Project/Area Number |
11470301
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河野 慎次郎 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (40333463)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸辺 一之 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (30251242)
中村 耕三 東京大学, 医学部・附属病院, 教授 (60126133)
川口 浩 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (40282660)
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Keywords | インスリン / IGF / 骨 / IRS / 骨折 / 軟骨 / 骨再生 |
Research Abstract |
IGF-Iおよびインスリンは骨・軟骨組織における重要な同化因子で、両者の受容体キナーゼ共通の基質であるインスリン受容体基質(IRS-1, IRS-2)はこれらの細胞内情報伝達に必須の分子である。我々は既に、IRS-1欠損マウスの検討によりIRS-1シグナルが骨代謝回転の維持に必須であることを報告した(J Clin Invest 105 : 935-943, 2000)。本年度は、IRS-1の骨再生における役割の解明を目的として、脛骨骨折モデルを8週齢のIRS-1欠損マウス(-/-)と野生型(+/+)において作製し、治癒過程を比較検討した(各n=15)。X線上、+/+では、1週後より仮骨形成が認められ、3週では全例が骨癒合した。仮骨の大きさは4週がピークで、その後リモデリングによって縮小した。一方-/-では、仮骨形成が著明に減少しており、10週間で15匹中4匹のみに小型の仮骨による弱い骨癒合が認められたが、残り11匹は骨癒合が認められず偽関節となった。組織学的な両者の相違は1週の早い時期より明らかであった。+/+では骨折部に近接した骨外膜で旺盛な膜性骨化が観察され、その周囲には間葉系細胞が広範に存在し、多くは増殖能を示すPCNA陽性を呈した。部位によっては軟骨細胞様の像も見られたが、肥大化の指標となるX型コラーゲンの局在は観察されなかった。一方、-/-では膜性骨化および間葉系細胞の増殖が乏しく、PCNA陽性細胞はまれであった。軟骨領域も減少していたが、形成された軟骨様組織においては、X型コラーゲン陽性の肥大軟骨細胞様細胞が散見され、TUNEL陽性を示すものも観察された。以上より、-/-の骨折修復では初期の間葉系細胞の増殖が抑制され、修復的な膜性骨化が減少するとともに、内軟骨性骨化においても十分な増殖なしに分化が進行し細胞死にいたるため、骨再生が阻害されるものと思われた。したがって、IRS-1シグナルは骨折治癒などの骨再生には必須であり、今後の骨折治療の主要なターゲットとなりうることが明らかとなった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Toru Akune: "Insulin secvetory response is positively asscciated with the extent of ossification of the posterior longitudinal ligament of the spire"Journal of Bone and Joint Surgery (Am). 83. 1537-1544 (2001)
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[Publications] 川口 浩: "インスリン/IGF情報伝達系による骨代謝の制御"新・分子骨代謝学と骨粗鬆症. 255-261 (2001)
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[Publications] 緒方直史, 川口 浩: "IRS-1遺伝子欠損マウスの骨代謝"The BONE. 15(7). 323-331 (2001)
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[Publications] 川口 浩: "インスリンシグナルと骨形成"The BONE. (in press).