2000 Fiscal Year Annual Research Report
大動脈遮断前アデノシン・ニコランジル全身投与の心拍変動、循環・腎機能に及ぼす影響
Project/Area Number |
11470321
|
Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
小松 徹 愛知医科大学, 医学部, 教授 (80109777)
|
Keywords | 大血管手術 / ニコランジル / 心拍変動 / 日内変動 / 動的恒常性維持能 / 循環調節能 / preconditioning / 大動脈遮断 |
Research Abstract |
生体現象のカオスに代表される「複雑性」が生体の恒常性維持に重要な役割を果たしている。心拍変動(HRV)は心電図を信号源にしており非侵襲的に解析でき、侵襲に対して生体の恒常性を保とうとする調節能のダイナミクスが反映されているバイオシグナルである。心拍変動l/fの時系列にフラクタル性あるいは複雑性が存在し、日内変動が存在することが知られている。大血管手術では大動脈遮断がおこなわれるためにshockを伴うような強い周術期ストレスが存在することが知られている。大血管手術を受ける患者は高齢者が多いために、周術期の循環調節能障害が術中・術後管理に対して大きな影響を与える。大動脈遮断等による虚血後再潅流障害にischemic preconditioning効果がATP感受性Kチャネル開口薬により持続し有用であることが報告されている。本年度はATP感受性Kチャネル開口薬ニコランジル投与時の腹部大血管手術後患者のダイナミカルな恒常性維持能の回復過程を心拍変動l/f日内変動解析により検討し以下の結果を得た。 (1)心拍変動周波数成分は手術直後より減少し、以後1週間にわたって回復しなかった。これより、循環の神経性調節能低下が術後1週間以上続くことが推察された。 (2)l/f slopeは術直後より3日間術前より昼も夜も緩やかになった。これは、周波数領域0.0001-0.01Hz(100秒-10000秒)に関連する動的恒常性維持機能低下がおこり、術後数日間で回復することが示唆された。 (3)PD2が変化しなかったことは、心拍変動を制御するSystemのComplexity(動的恒常性維持能)が大血管手術患者では術後早期に回復していることを示している。 (4)今回の結果より、周術期の侵襲と神経系反応を検討する上で、HRV profileによる線形・非線形HRVパラメータの日内変動を含めた時間経過を総合的に評価する必要性が示唆された。 (5)ニコランジル投与により周術期ストレスを制御し、生体機能を有利に維持できる可能性がある。
|
-
[Publications] 小松徹,木村智政,堀場清: "心拍変動の基礎と麻酔科領域での臨床応用"臨床麻酔. 24. 1771-1786 (2000)
-
[Publications] 小松徹,木村智政,堀場清: "心拍変動"集中治療. 12. 113-123 (2000)
-
[Publications] 小松徹,堀場清,木村智政: "自律神経モニタリング(心拍変動)"医薬の門. 41. 70-79 (2001)
-
[Publications] Kawase M,Komatsu T,Nishiwaki K, et al.: "Heart rate variability during massive hemorrhage and progressive hemorrhagic shock in dogs."Can J Anaesth.. 47. 807-14 (2000)
-
[Publications] 小松徹 他: "腹部大血管手術後の心拍変動1/f slope日内変動"日本集中治療医学会雑誌. 8. 242 (2001)
-
[Publications] 川瀬正樹,小松徹 他: "心臓・胸部大血管手術患者における執刀刺激が血圧変動に及ぼす影響"日本臨床麻酔学会誌. 20. S374 (2000)