1999 Fiscal Year Annual Research Report
麻酔薬の記憶固定促進作用の基礎的研究・・・海馬LTPの多点解析とCaイメージング・・・
Project/Area Number |
11470324
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kagawa Medical School |
Principal Investigator |
小松 久男 香川医科大学, 医学部, 助教授 (90162049)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 洋一 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教授 (00144444)
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Keywords | 海馬 / 長期増強 / エンフルラン / 記憶の固定促進 |
Research Abstract |
今年度は新規購入のMEDシステムの納入が遅れ,現在調整中である.従ってこれまでの実験装置を用いて,これまでに行なってきた海馬スライス実験の補充(スライスの保存条件の改良と例数を増やすこと)を行なった. 1.CA1領域におけるfield potentialに及ぼすエンフルランの影響 2%及び5%のエンフルラン溶液を20分間還流すると集合電位の大きさおよびEPSP slopeはほぼ濃度依存的に抑制された.麻酔薬をwashoutしていくと時間とともに回復し,2-30分でほぼ元のレベルに戻った.paired pulse facilitationの変化が一定でなかったため,この抑制がpresynaptic作用かpostsynaptic作用かは特定できなかった. 2.CA1領域における既成立の長期増強に及ぼすエンフルランの影響 0.3mA,100Hz,1secのテタヌス刺激を、10秒間隔で3回Schaffer側枝に与えることによって、CA1錐体細胞領域および樹状突起部のfield potentialにおいてLTPを成立させることができた。その後,2%及び5%のエンフルラン溶液を20分間還流すると集合電位の大きさおよびEPSP slopeはほぼ濃度依存的に抑制された.しかし,これにはかなり標本差が見られた.かなわち,2%のエンフルランにより,50%の抑制を来すものから,全く変化を受けないものまで観察された.5%では,30%程度から100%の抑制を受けるものまで観察された.washoutにより多くのスライスで元のレベルまで回復した.中に,元のレベル以上に増大するものが16例中9例に認められ(麻酔後増大と呼ぶ),マウスでの行動実験から得られた記憶の固定促進現象を支持するものと考えられた.長時間観察すると,不意に数倍のレベルまで自発的に増大を繰り返す場合があるが,この現象も行動実験を支持すると考えられた.1Hzのパルス刺激を900回与えることにより同領域にLTDを成立させた。しかしこれはLTP程長期間成立せず、これを安定して得るための刺激条件を探すことが引き続き必要である。 3.エンフルランが後の長期増強を生じさせることの証明 弱い高頻度刺激により,続く強い高頻度刺激による長期増強は抑制されるが,弱い高頻度刺激の期間にエンフルランを作用させると続く強い高頻度刺激により長期増強が生じることを証明した.今後例数を増やす必要がある. 4.長期増強の麻酔後増大現象を支持するもう一つの発見 初めに長期増強を起こさない程度の弱い高頻度刺激を上記実験と同様に与える.その後,エンフルランを作用させ,washoutし,回復した時点で,再び弱い高頻度刺激を加えると,エンフルラン作用前には生じなかった長期増強が生じた.
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