2000 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠の成立および胎児発育における肥満遺伝子産物レプチンの意義に関する総合的研究
Project/Area Number |
11470348
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
佐川 典正 京都大学, 医学研究科, 助教授 (00162321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 佳宏 京都大学, 医学研究科, 助手 (70291424)
刈谷 方俊 京都大学, 医学研究科, 講師 (90243013)
小西 郁生 信州大学, 医学部, 教授 (90192062)
伊東 宏晃 京都大学, 医学研究科, 助手 (70263085)
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Keywords | レプチン / トランスジェニックマウス / 生殖機能 / 卵巣機能 / 妊娠 / 摂食抑制 / 胎児発育 / 胎盤 |
Research Abstract |
本年度は、まず、レプチン遺伝子を肝臓に過剰発現させたtransgenic(Tg)マウスを用いて、高濃度のレプチンが長期間存在した場合の生殖機能への影響について検討した。 幼弱マウスにおいては高濃度のレプチンは生殖機能の発現を促進したが、生後14週以降になると、対照群では生殖機能が維持されているにもかかわらず、レプチン過剰発現Tgマウスでは妊孕能が著しく低下した。この時、視床下部のGnRH含有量は有意に低下しており、また、外因性に投与したGnRHに対する下垂体の反応性(LH分泌)は低下していた。しかし、外因性にゴナドトロピン(PMSG)を投与するとTgマウスの卵巣には多数の卵胞発育が認められたことより、卵巣はゴナドトロピンに対する反応性を保っていると考えられた。 以上の成績から、高濃度のレプチンは短期的にはマウス生殖機能を促進するが、長期間存在した場合には、主に、視床下部・下垂体系に作用して生殖機能を抑制する可能性が示された。 つぎに、レプチンと胎児発育の関係を検討した。Tgマウスの摂食量は妊娠前、妊娠末期ともにnonTgマウスと比較して有意に低値を示したことから、妊娠中にもレプチンの摂食抑制作用は機能していると考えられた。妊娠20日目のTgマウスの胎仔体重は、対照群に比して有意に低値であった。この機序が摂食量の低下によるものか、母体血糖値の低下によるものかは今後の検討を要する。一方、ヒトの妊娠においては、妊娠中毒症合併妊婦の中でも胎児発育遅延を認める群では胎盤におけるレプチン遺伝子発現が亢進しており、かつ母体血中のレプチン濃度は有意に高値を示した。レプチンはインスリン感受性の亢進を介して母体血糖値を低下せせる方向に作用すると考えられることから、ヒトにおいては、胎盤由来のレプチンが胎児発育と何らかの関連を有している可能性が示唆された。
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[Publications] Noriomi Matsumura,Norimasa Sagawa, et al.: "Conservative Management of placenta Aooeta without Use of Methotrexate Changes in the Serum Levels of Human Chorionic Gonadotropin and Pulsatility Index of Uteine Arteries."Journal of Obstetrics and Gynecology Research. 26. 81-87 (2000)
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[Publications] Shigeo Yura,Yoshihiro Ogawa,Norimasa Sagawa, et al.: "Accelerated Puberty and Late Onset Hypothalamic Hypogonadism in Female Transgenic Skinny Mice Overexpressing Leptin."The Journal of Clinical Investigation. 105. 749-755 (2000)
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[Publications] Masato Kotani,Issei Tanaka,Norimasa Sagawa, et al.: "Multiple signal transduction pathways through two prostaglandin E receptor EP3 subtype isoforms expressed in human uterus."The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism. 85. 4315-4322 (2000)
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[Publications] Takuya Inoue,Noriomi Matsumura,Norimasa Sagawa, et al.: "Severe congenital cytomegalovirus infection with fetal hydrops after maternal recurrent infection."Europian Journal of Obstetrics and Gynecology. (in press). (2001)
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[Publications] 伊東宏晃,佐川典正 他: "妊娠時子宮動脈血流調節におけるグアニレートサイクレース系の関与."日本妊娠中毒症学会誌. 8. 79-82 (2000)
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[Publications] 由良茂夫,佐川典正 他: "ヒト絨毛細胞における肥満遺伝子産物レプチンの産生機序."産婦世界. 52. 239-245 (2000)
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[Publications] 佐川典正 他: "レブチンと生殖生理.Annual Review内分泌,代謝2000.編集金澤康徳,他,68-79頁"中外医学社,東京. 12 (2000)
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[Publications] 佐川典正: "胎盤におけるレプチンの役割 Biology of Pregnancy―妊娠の生物学 中山徹也 他 編"永井書店、大阪(印刷中). (2001)