1999 Fiscal Year Annual Research Report
再石灰化に果たす唾液の役割に関する高分解能電子顕微鏡的研究
Project/Area Number |
11470382
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
柳澤 孝彰 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (10096513)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
見明 康雄 東京歯科大学, 歯学部, 助教授 (00157421)
水口 清 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (00133380)
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Keywords | ヒト完全埋伏歯 / 人為的脱灰 / 耳下腺唾液 / 非脱灰研磨切片 / 再石灰化 / 走査型電子顕微鏡 / 顕微X線法 / 高分解能電子顕微鏡 |
Research Abstract |
再石灰化に果たす唾液の役割を結晶形態学的に明確にするため、ヒトの完全埋伏歯を材料としてまず琺瑯質の一部をワックスで覆い、人為的に脱灰を施した。次いで、脱灰面の半分を更にワックスで覆い、ヒトの耳下腺唾液もしくは人工再石灰化液に浸漬した。以上の実験を終了した歯面から全ワックスを除去し、実体顕微鏡ならびに走査型電子顕微鏡(SEM)で観察を行った後、ポリエステル系樹脂に包埋して研磨切片を作製し、それを光学顕微鏡法ならびに顕微X線法(CMR)により観察した。 その結果、脱灰および唾液もしくは再石灰化液に浸漬した歯面は、何れも琺瑯質本来の透明感を失って白濁していたが、SEM観察では人為的脱灰により侵蝕された表面が唾液や再石灰化液に浸漬することによって、それが回復すると共に表面に微細粒状ないし小顆粒状構造物を沈着させていた。なお、試料を割断し酸エッチングを施してみると、無処理歯面の表層は粗造化するが、唾液処理歯面の最表層は比較的滑らかで、酸エッチングに対し抵抗性を示していた。CMRでは、脱灰により表面から約100μmの範囲でX線透過性が一様に増していたが、それに唾液処理を施した部はX線の透過性が減少し、特に最表層では再石灰化と目される層が出現していた。また、一部の試料では深層にも再石灰化によるX線不透過層の出現が観察された。 以上のごとく、人為的脱灰ではあるが異常を蒙った歯に対し、唾液はその修復能を有していることが明らかとなった。また、再石灰化とは直接関係ないものの、唾液は酸に対する抵抗性を増強することも示唆された。本年度は実験の遅れもあり、明らかにした事実はここまでであるが、次年度は本来の目的である高分解能電子顕微鏡による検索を開始する予定でおり、より質の高い結果がもたらされるものと確信している。
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