Research Abstract |
研究者らは、ウサギの三叉神経末梢を頻度5Hz,強度5〜20mAで電気刺激すると,交感神経活動の減少により,血圧の低下,心拍数の減少が惹起されることを確認した.今回,三叉神経に加えられた刺激が,どのような経路によって交感神経系に影響を与えているか延髄レベルで検討した. 実験には日本白色家兎を用い,ウレタン,α-クロラロース,ガラミンを投与し,気管切開した後,人工呼吸下で実験を行った.三叉神経刺激には眼窩下神経を用いた.ウサギを定位固定装置に固定後,延髄を露出させた.延髄の破壊にはリージョンジェネレータを用い,直径0.25mm,先端露出部0.25mmのプローベにより80℃にて60秒間通電し,直径0.25mmの創傷を作成した. 延髄の破壊部位は三叉神経脊髄路・三叉神経脊髄路尾側亜核複合体(spinal trigeminal complex, STC),吻側延髄腹外側部(rostral ventrolateral medulla, RVLM),尾側延髄腹外側部(caudal ventrolateral medulla, CVLM)とした. 破壊前の平均動脈圧は眼窩下神経5Hz,5mAの刺激では約25%の低下,5Hz,20mAの刺激では約20%の低下を認めたが,STCの破壊により,これらの血圧低下は小さくなった.一方,眼窩下神経刺激により,血圧低下の後に血圧上昇がおこった家兎においては,STC破壊後の刺激では,血圧低下はほぼ消失したものの,血圧上昇の反応は残存した.以上の結果から,眼窩下神経によっておこる降圧反応と昇圧反応とではその伝導路が異なることが示唆された. RVLMおよびCVLMの破壊では,眼窩下神経刺激による血圧の低下の程度は破壊前後で差はなく,循環の調整に重要な部位とされるこれらの部位は,三叉神経末梢からの刺激が交感神経系へ至る経路としては重要ではないことが示唆された.
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