2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11480003
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松田 光生 筑波大学, 体育科学系, 教授 (20110702)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 清司 筑波大学, 臨床医学系, 日本学術振興会特別研究員
宮内 卓 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (60222329)
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Keywords | エンドセリン / 一酸化窒素 / 運動 / 水泳トレーニング / 血管内皮細胞 / クロストーク / 加齢 / 動脈伸展性 |
Research Abstract |
本研究は、血管内皮細胞が産生する主要な血管作動性物質であるエンドセリン(ET)と一酸化窒素(NO)の運動に関連した循環調節への関与について解明することを目指す。今年度は、下記の成果を得た。 1.運動中のETとNOの相互作用に関する検討 我々は、すでに運動中に血流が減少する腎では、ET(血管収縮物質)の産生は増大し、NO(血管拡張物質)の産生は減少することを示した。ETとNOは、血管平滑筋への作用だけでなく、各々が他方の産生を抑制する作用もあるので、運動中のET産生の増大は、腎でのNO産生の減少に影響を及ぼしているかを検討した。ET受容体遮断薬投与の有無により2群に分けた運動群ラット及び安静群ラットにて、腎でのNO産生を比較した。運動により、腎のNO_X濃度及びNO合成酵素活性は有意に低下したが、遮断薬の投与により、それらの低下は抑制された。したがって、運動中の腎におけるET産生の増大は、血管平滑筋に対する直接的な収縮作用のみでなく、NO産生を抑制することにより、間接的にも腎血流の減少に関与している可能性が示唆された。 2.老齢ラットのトレーニングがNO産生に及ぼす影響 NO産生能は加齢に伴い低下する。若齢動物では、トレーニングによる大動脈のNO産生能増大が示唆されている。本研究にて、老齢期のトレーニングは加齢に伴うNO産生能低下を改善するという仮説を検証した。8週間の水泳トレーニングを21ケ月齢の老齢ラット(老齢水泳群)に負荷し、大動脈における内皮型NO合成酵素遺伝子(eNOS mRNA)及びタンパクの発現を、安静飼育した同月齢のラット(老齢安静群)及び4ケ月齢のラット(若齢安静群)と比較した。大動脈のeNOS mRNA及びタンパクの発現は、若齢安静群に比べ老齢両群で低下していたが、老齢水泳群では老齢安静群より亢進していた。したがって、老齢期から開始したトレーニングでも、加齢に伴う大動脈のNO産生能低下を改善する可能性が示唆された。 3.一過性低強度運動に伴う動脈伸展性の変化 中枢及びそれに連なる末梢への伝導動脈の伸展性が増加すれば、血流運搬は効率化される。また、伸展性の増大が運動部位で局所的にみられれば、それはNO等の局所由来の血管拡張因子が関与していることを意味する。この仮説を検証するため、健常者に仰臥位で低強度片脚自転車運動を負荷し、中心動脈及び末梢の弾性動脈の伸展性の変化を動脈脈波伝搬速度(PWV)により検討した。中心動脈のPWVは運動中に有意に低下した。末梢の弾性動脈のPWVは、運動直後に運動脚のみ有意な低下が認められたが、非運動脚では変化しなかった。したがって、運動により動脈伸展性は増大し、しかもそれは血流の増大と関連する局所的因子によるものである可能性が示唆された。
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[Publications] Seiji Maeda, et al.: "Effects of exercise training of 8 weeks and detraining on plasma levels of endothelium-derived factors, endothelin-1 and nitric oxide, in healthy young humans"Life Sciences. 69. 1005-1016 (2001)
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[Publications] 前田清司, 他: "運動と内皮由来血管作動性物質 -エンドセリンと一酸化窒素(NO)-"運動生化学. 11/12. 75-81 (2001)
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[Publications] 柿山哲治, 他: "6ケ月間の低強度運動トレーニングが中高年女性の大動脈伸展性に及ぼす影響"日本臨床スポーツ医学会誌. 9. 226-233 (2001)