1999 Fiscal Year Annual Research Report
トリチウムオートラジオグラフによるジルカロイ表面酸化膜の水素透過機構の解明
Project/Area Number |
11480127
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
杉崎 昌和 九州大学, 大学院・総合理工学研究科, 教授 (10037905)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 寛 九州大学, 大学院・総合理工学研究科, 助手 (50301346)
|
Keywords | ジルカロイ / トリチウム / ミクロオートラジオグラフィ / 高燃焼度化 / 水素脆化 |
Research Abstract |
ジルカロイー2は高温水により酸化される際に水の解離により発生する水素を酸化膜を通して吸収する特性があり、ジルカロイに吸収された水素量が多くなると水素脆性などを引き起こすため、その吸収量の低減化が求められている。しかしながら、酸素膜中の水素の輸送経路は必ずしも明確にされておらず、水素吸収低減化の指針を得るためにはその輸送経路の特定が焦眉の問題であるとされている。水素の輸送経路の特定が難しい原因として、固体中の水素原子の空間分布を測定する機器分析としては走査型二次イオン質量分析計しか利用できず、しかもその分析感度および空間分解能があまり高くないことが挙げられる。そこで、本研究では水素同位体として放射性のトリチウムを利用して、ベータ線によるミクロオートラジオグラフを行い、水素の輸送経路を調べた。実験の詳細および得られた主な成果は次の通りである。 1気圧673Kのトリチウム水蒸気中でジルカロイー2を酸化して、生成したジルコニア酸化膜中のトリチウムの分布状態をトリチウムミクロオートラジオグラフの手法に基づき走査型電子顕微鏡を用いて観察した。トリチウムは酸化膜の表面近くに高濃度に存在しており、表面からの深さ方向に沿ってその濃度は急激に減少していた。また、酸化膜中では金属間化合物であるZr(Fe,Cr)_2およびZr_2(Fe,Ni)中に高濃度に存在していた。これらの実験結果より、水素の輸送経路として主にジルコニア中の粒界であるが、酸化膜中に存在する金属間化合物が水素の輸送経路として重要な役割を果たすことを結論した。また、熱処理条件により水素吸収量が大きく変化するのは、金属間化合物の粒径が熱処理条件に大きく依存しているためであることを結論した。
|